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4.お迎え(日常 流衣、伊織、海、要、誠一郎)
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しばらく赤ん坊を抱えてゆーらゆら。
赤ん坊は静かになり、ゆーっくりと瞬きしている。
ウトウトし始めた赤ん坊を抱きながら洗面台へ。
おろしたてのフワフワのタオルで赤ん坊を包む。
あー、しかし、赤ん坊ってほんと天使。
可愛いなぁ。
フワフワになった赤ん坊を抱えて、リビングルームへと移動する。
リビングルームに入ると、リビングルームの食卓用のデスクで伊織と要君がショートケーキを食べようと準備していた。
「あ、それ今日のおやつ。」
「お腹減ったーってこいつが言うんやもん」
「だって…。ごめんなさい。」
「あー、いいよいいよ。ゆっくり食べな。」
こんな子供に謝られるなんて後味悪い。
大の大人が3人で食べようと思っていたケーキなんざ、子供の栄養価になる方が幾分有意義がある。
大きくなれよー。
ガチャッ
バンッ!!!!
あ、流衣。
電話を終えたのか、流衣はリビングルームに戻ってくる。
力強く閉じられたドア。
その表情は険しく、怒気が見て取れる。
おーこわ。
ドスンとリビングルームに置いている大きめのソファに倒れるように座った。
「流衣。どーなったん?」
「んあ"ー!腹立つ!!」
「なんや、何切れてんねん。」
「この子ら家で育てるから!!!」
……………んん?
「まてまてまてまて!ちょっ、落ち着け!何言ってんねん!お前。」
「あ"ーもう!なんなのあいつ!」
「お前がなんやねん!話聞けよ!!」
頑張れ伊織。
今回ばかりは私は伊織の味方だ。
フォークを持った要がポカンとした顔で流衣を見ている。
「だって!あいつクソ野郎なんだよ?!だから女は嫌いなんだ!!感情で話しやがってー!!」
「わからへんて!なんの話ししてんねん!感情的に話してんのはお前や。」
「俺とあいつ一緒にすんの?伊織ちゃんと言えど俺怒るよ?」
「いやだから。順を追って話せよ。あいつって誰やねん。なんでそんな結論になったん?」
「えっとなー何から話したらいいんだ…」
伊織に賛同だ。
こちとら疑問しかないのにその結論はないだろう。
そのおばさんとやらが車で送ったのなら、なぜそのおばさんとやらがこの家に話しに来なかったのか?とか
弟って確証はあんのか?とか。疑問は色々ある。
手紙の内容は見ていないから確認のしようがないが、流衣の話し方から見て、この子達は流衣の弟で、両親死んだんだから、面倒見てほしい、とか、そんなことが書いてあったんだと思うけど。
それはわかるが、何があったの?
「結論から言うと、彼らが俺の弟であるのは間違いない。彼らの父親は九条 武臣(クジョウ タケオミ)。俺の父親と同じだ。戸籍寄せたら分かるらしい。俺の母親は16年前に亡くなっている。その後、親父は1人目の女性と母の死後2年後に結婚。その女性との子が要だ。5年後に離婚。親権が親父に渡った。その6年後、2人目の女性と結婚。この女性が結婚時まだ18だったそうだ。この子との子供が誠一郎だ。」
「んん?つまり?」
「俺と要と誠一郎は親父は同じだが、母親がそれぞれ違うってことだな。」
「へー。で、おばちゃんとやらの正体は?」
「親父の最後の奥さんの妹さんだそうだ。親父と最後の奥さんが亡くなって。この子達の親権について困っていたんだと。」
「なんでやねん。何迷う必要あんの?」
「言ったでしょ。最後の奥さん結婚時18だったって。」
「あー、そうか。」
「最後の奥さんは死亡当時21だった。妹さんは現在18だそうだ。とても面倒見きれない。と。」
「あー…」
「両親が死んでるから、親族に引き取られるか、施設に行くか。叔母である妹さんには養えるほどの器量がなくて。困っていたら親父のデスクにここの住所が残っていたんだと。」
「なんでまた」
「それはわからないけど。でも、それで。妹さんからすれば、親族として子供を養えるのはこちらだと。それが無理なら施設に渡してくださいって。弁護士には連絡するので。ってさ。無責任この上ないよね」
「まぁ、急な事故なんだし。その妹さん責めたるのも可哀想なきがするな。で、その子たちの選択権が突然流衣に回ってきたってことか。」
「それをキーキーヒステリックに耳側で言われんの。この子らは自分とは他人も同然なんだから面倒見るわけないとか、あなたが無理なら施設でいいじゃんとか!!うっせぇ!俺が面倒見れねぇほど金に困ってるとでも思ってんのか!俺は完璧な人間だぞ馬鹿やろう!!」
「んー、そういうこととちゃうと思うけどな。」
複雑な環境がさらりと伝えられる。
子供は理解できたのだろうか。
要君はフォークを握ったまま、ケーキには手をつけていない。
ああ、食べていいのに。
「要、お前はどうなん?」
「え?」
「お前はどうしたいん?」
「んーっと」
「初対面やし、こんなこと言うのもあれやけど。お前は選べるんやって。この家で俺らと暮らすのか。施設っちゅーとこで同じような子供達と生活していくのか。」
伊織は手に持つフォークでショートケーキのイチゴを刺す。
子供に理解できてんのかその選択肢。
「えっと… オジちゃんは、俺のお兄ちゃんなの?」
「まぁ、そうね。君のお兄ちゃんだね。」
「お兄ちゃんは?」
「俺?俺はー…まぁ、伊織でえぇよ。」
「お兄ちゃんは?」
「あ、僕も海でいいよ。」
「……。」
こんな子供が自分の生き方を決めるなんて酷なことだろうか?
いや、むしろ大人に勝手に決められるよりはマシなのかな。
「お兄ちゃんたちと、一緒にいれるの?居てもいいの?」
居てもいいの?
11歳の少年は、状況をきちんと理解している。
そんな言葉、子供に言わせたくはなかったけど。
流衣の顔を見ている姿は、少し凛々しくも見えた。
しっかりとした子供だな。
「当たり前だろ!弁護士でもなんでも来いよ。返り討ちにしてやるわ」
「はぁ…俺はもう知らんで。海君、頑張ってねぇ」
「えー、困るよー。伊織も手伝ってよー。」
伊織はフォークに刺したイチゴを要の前に突き出した。
それを見た要はジッと伊織の顔を見てから、パクッとイチゴに食いついた。
ほっぺたを膨らませてもぐもぐして、ごくっと飲み込むと、要はにっこりと笑った。
「お兄ちゃん、ありがとう!」
子供って、ほんと天使だね。
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