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3.小休憩(日常 流衣、伊織、海、要、誠一郎)
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「それで?私に言いたいことはそれだけ?」
「あー…えー………ごめんなさい?」
「なんで疑問形なのさ。謝る時はきちんと謝る!」
「わーん!ごめんなさいぃ!だって、流衣だって悪いんやから!俺だけのせいやないもん!」
「話をそらすな!流衣の罪は流衣に問う!今は伊織の話でしょ?!」
「わーん!ほら、怒られたー!流衣のあほぉ!」
もうね。
せめて水洗いくらいしときなさいよ。
朝一で成人済男性のパンツとスウェット洗う私の気持ち分かる?!
精液は早く洗わないとシミに残るし、匂いもつくってあれほど言ってるのに。
学ばないんだから。
「ほら!私は今から洗濯するの!向こうで要と遊んどいて!誠一郎も見といてね!」
「ふわぁーい。」
伊織は潤んだ目のまま、リビングへと向かっていく。
私が朝一に気持ちよく顔を洗ってる時に、汚れたパンツとスウェット持ってモジモジしながら報告してくるなんて君は思春期の中学生か?!
ほんとにもう。
伊織のパンツとスウェットを持ってお風呂場へ。
あぁ、流衣のスポーツウェアもついでに洗うか。
汗を含んだウェアも手洗いしてから洗濯すると気持ちイイ匂いと手触りになるからね。
朝から私は忙しいんです。
カチャ
「あ、おはよう!伊織!」
「おー、要おは。お前朝早いなぁ。」
「海君起きてるから。お手伝いするの。」
「そら偉いやん。今何時?」
「7時23分!」
「はーん。俺も一度寝よかなー…ちょー早いやん。」
「今日ね、朝ごはんホットケーキなんだよ!伊織食べない?」
「ホットケーキ?!なんや、美味そうやな!それは食べたいなぁ。」
「でしょ?海君にお願いしたら作ってくれるって。」
ホットケーキて、おやつやないんか。
朝ごはんになんの?
パンのくくりなの?
海君、今日機嫌悪いけど大丈夫かなぁ。
要は粘着質なローラー式の掃除道具で、ラグの上をコロコロと掃除していた。
「流衣は?俺と一緒に起きてきたやろ?」
「お部屋に戻った!朝ごはんできたらまた起こしに来てって。」
海君の怒声聞いて逃げたな。
あの野郎。
いやぁ、微妙な時間。
パンツ洗い終わったら朝ご飯だよなぁ。
コーヒーでも飲むか。
キッチンの棚からコーヒーミルと豆を取り出し、リビングのデスクに座る。
コーヒーミルに豆を入れて取っ手を持ち、ゴリゴリと挽いていると、デスクに要が近寄ってくる。
「なにしてるの?いい匂い!」
「コーヒー作ってんの。豆を砕いて、これをあの機械にいれたらコーヒーが出来るんやで。」
「面白そう!やらせて!」
「えぇでー。ほら、この取っ手グルグル回してな。結構力いるで。気をつけてな。」
「うん!わかった!」
要はいい返事をしたと思ったら、キッチンへ走っていく。
なにしてんの?
よく見ると、キッチンで手を洗っている。
よく躾のされたお子ですこと。
海君、躾に厳しいタイプなんか。
すると、リビングの床から、ふわぁあああ!という鳴き声が。
もうね、泣き声じゃなくて鳴き声。
チビ怪獣さんも起きたんかい。
要と席を変わってリビングの床を見に行くと、ぐずっている誠一郎。
あー…泣かんといてや。
誠一郎を抱きかかえ、海君よろしくゆらゆらと体を揺らしてみる。
だが、
あ"ぁあ"あああぁ!
ご立腹なの?誠一郎君。
海君今、俺のパンツ洗ってんねん。
ちょっと待ってや。
ぐずぐずする誠一郎を抱っこしながらデスクを見ると、要がコーヒーミルをグルグルと回している。
海君、いつも朝からこんなことやってんの?
すごいなぁ。
カチャ
「あぁ、伊織。ありがとう。」
「おん?もう終わったん?」
「うん。いつもやってるからね。それに、誠一郎の泣き声も聞こえたし。貸して。」
誠一郎を海君に手渡すと、海君は背中をポンポンと撫でながら体を揺らしている。
途端に止まる誠一郎のぐずり。
おい、俺となにが違うねん。
誠一郎は海君の肩に頬を乗せて満足げな顔で脱力している。
「なにしてんの?コーヒー?」
「おん。俺が飲もうと思って。」
「じゃあ人数分頼むよ。今日の朝はホットケーキにするから。」
「要の分も?」
「要のはコーヒー牛乳にするから。お願いね。」
海君はリビングのチェストの上に置かれていた抱っこ紐を取ると、ささっと誠一郎をおんぶして紐を縛った。
もう慣れてるやん。
ほんま、おかんやな。
言うたら怒られるから黙っとくけど。
「伊織、くるくるできた。これどうするの?」
「あぁ、それできたら棚のあそこにある白い三角っぽい紙にいれてな…
お休みの朝の、平和な始まり。
「「「いただきまーす!」」」
「はい、どうぞー。」
4つ分の卵白をボウルにいれて、砂糖を小さじ2杯。
メレンゲになるまで、しっかりあわ立てたら、レモン汁を少々。
別のボウルに残った黄身と牛乳、ホットケーキミックスを入れてしっかりと混ぜたら、先に作ったメレンゲを加えて切るように混ぜる。
手早く混ぜたら弱火で熱したフライパンに、薄くバターを引いて、生地を焼く。
裏返すとほんのり茶色に色が変わる生地。
甘い香りが食欲をそそる。
いいね。
美味しそう。
出来上がった生地を2枚重ねて、上から真っ白な粉砂糖を振るう。
小さくカットしたバターとメープルシロップを最後にかければ出来上がり。
お手軽で経済的。
さらに美味いときた、最高の食ですね。
流衣、伊織、要は美味しそうに微笑みながらホットケーキを口に運ぶ。
「おいひー♡さすが海君やなぁ。」
「美味しい!ふわふわだ!すごい!」
「ねー、ふわふわ美味しい。お店のやつみたい。」
ふふ
いいね、みんな美味しそう。
この瞬間、この空気がとても好き。
「あ!!あ"ぁあ!!」
「あぁ、はいはい。」
忘れてないよ、誠一郎君。
君もご飯だね。
今日はトマトとお米の離乳食だよー。
「んんっ!せや、流衣。週明け水曜日に、出版社に行ってきてもええ?夜は会食もあんねんけど。」
「……んん?なんで?スカイプじゃダメなの?」
「うん。今俺が翻訳してる本の原作書いてるジェフリー L スタイン が日本に来るん。で、俺が翻訳するから会いたいーって言ってくれてんねん。」
「…おとこだよね?」
「うん。でもその人嫁も子供もおるから。」
「………あいつは?担当の佐々木。」
「そら、担当やから来るけど。」
「佐々木来るならダメ。スカイプにしてよ。」
「えー!?せっかくジェフリーに会える機会なのに?!」
「佐々木はダメ。絶対伊織のこと狙ってるもん。」
「えー…ほな、会食終わったら海君に迎えきて貰うから。それならえぇやろ?会食までは社長も専務も一緒やし、変なこと起きひんやん。」
「なんで言うこと聞かないの?俺の話聞いてた?」
「だって!これはどうしても行きたいの!フィンランドとか、絶対会えへんやん!お願い!流衣!!」
「ダメ。」
「お願い!流衣!!お願いします!」
うーん、なかなか厳しい話だね。
伊織の担当の佐々木さん。
たしかに伊織を見る目と手つきが怪しいんだよなー。
会食ってことはお酒も出るだろうしね。
ただ、今回のジェフリー L スタイン さんは伊織の憧れの人でもあるし、何作も翻訳してきてるから思い入れも深いのは分かる。
困ったね。
ふと要を見ると、気まずそうな顔でホットケーキを頬張っている。
あーあ。
せっかく要のために作ったのに、こんな顔。
流衣ぃー、伊織ぃー。
「もうわがまま言わへんから!これ行けたらなんでも言うこと聞くから!」
「……絶対だよ。」
「あ?」
「絶対、海君に迎えきてもらってね。会食の場所も絶対連絡して。」
「…あ。ありがとう!流衣!ほんまにありがとう!」
あぁ、嬉しそうな伊織の笑顔。
可愛いなぁ。
流衣も流石にこれは折れたね。
と言うことは、水曜日はその予定が入るってことね。
了解。
「……伊織、大丈夫?どっか行くの?」
「おん!要すまんな!もう大丈夫やで!やったぁー!」
「ふふ!伊織が嬉しいと嬉しいね!ね!海君!」
「う、うん。そうだね。ほら、要、顎に砂糖ついてる。」
「はーい。」
空気を察したのか、要はまた笑顔になりホットケーキを食べる。
ちょっと量多かったかな。
しっかり噛めよ。
ふと流衣を見ると、少しだけ眉を下げて、心配そうに伊織を見ながら手に持つフォークをゆっくり皿に置いた。
流衣、君の心は理解できるよ。
「あ、せや!それとな!今日この後海行かへん?」
「海!!」
「そう!もう8月も終わんのに夏らしいことしてへんやん。要も海行きたいやろー?」
「行きたい!」
「そうは言ってももう8月も後半だし、クラゲがいっぱいでてるんじゃないのー?」
「お盆過ぎて海って良くないとも言うよね。」
「なんやー!ノリ悪い!ちょっと足先浸かるだけでもいいやん!夏の海行こやー!」
「おー!」
盛り上がる伊織と要。
どうするの?流衣。
「もー、仕方ないなぁ。ちょっとだけだよー。」
「やたー!」
「海ー!!」
こう…
子供が増えた感あるよね。
流衣、仕事で疲れてるだろうに、伊織のおねだりに弱いんだから。
まぁ、今回は伊織と要のダブルパンチだから、不可避かもしれないけどね。
さて、そうと決まったら私は準備しなければ。
洗濯早めに済ませておいてよかった。
流衣を見ると、はしゃぐ伊織と要を優しげな微笑みで見つめていた。
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