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「ヨアケノバンニ」蓮視点
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朝から頭が破裂しそうだった。
寝たのか寝てないのかよく分からない心地でとにかく頭が重い。
昨夜、あれから雅が抱かれるのを見せられた俺は契妓達の部屋に戻った途端、布団に潜り声を押し殺して泣いた。
見たくなかった。
アイツが他の奴に抱かれるとこなんて…、あんな声で啼くとこなんて……。
「最悪…」
「何が最悪なんだ?」
自分の朝飯の準備をしていると背後から明るい声が背中を押した。
「!…おはよう光。お前のとこも泊まり?」
「あぁ。お互い毎日忙しいな。忙しすぎてたまにはゆっくり寝てみたいよ」
光の大アクビにつられて俺もアクビを漏らす。
俺達契妓は主である花魁の客が泊まりだと6時には朝飯を用意して運ばなきゃならない。
帰った後は部屋の片付けや掃除。
花魁の用事や予約客の把握と準備なんかがあって休む暇もない。
それは自分の主の人気に伴って大きく偏るが、雅は約30名いる花魁の中でも常に1、2を争うほど人気が高い。
だから大抵泊まりの客がいて、どんなに遅くても4時過ぎには起きないと自分達の朝飯を悔い逃がすことになる。
「それで、何が最悪って?」
「…………光さ、八千代花魁の…その…接客してるとこって見たりするか?」
「接客…?」
飯をよそいながら光は目を丸くした。
光の主の八千代花魁は雅のライバル的存在で、いつも2人はいがみ合ってる。
とは言っても雅が一方的に敵視されてるに過ぎず、当の本人はどこ吹く風と言った様子だ。
「接客ってセックスの事?普通に見るけど」
「えっ!?お前……平気なのか?」
「平気って言うかー、もう見慣れたかな。なんで?」
「嫌じゃ…ないのか?俺達もいずれは…」
男に突っ込まれてよがり声を上げる。そんな事想像したくもない。
瞼の裏に焼き付いた昨夜の光景は俺の心の中に強い拒絶を生み出していた。
「……別に?」
「え…」
「確かにヤるのは嫌だけどさ、生きる為ならしょうがないだろ?それに何回かこなせば身体も慣れてきて辛くなくなるだろうし、見るのと同じだよ。その内何にも感じなくなる。皆そうなんじゃねーの」
「…………」
こいつは同じ歳なのに俺なんかよりずっと大人だ。
孤児院からここに連れて来られ、望んでもいない場所で生きる事を強いられ、それでも生きていこうと現実を受け入れられる強さは俺にはない。
俺には……拒否しかない。
「ヤバい、早く食わないともう5時だぞ!」
「…あぁ」
この世界を拒否することは生きることを拒否するのと同じだ。
今まで数え切れない脱走者がいたが逃げ切れたのはごく少数。
そのたびに警備や監視が強化され、俺がここに来てから脱走に成功した者は1人もいない。
そして捕まった者は全員その場で死を与えられる。
……だけど俺はその方がいいのかもしれない。
それならいっそ、潔く自ら死を選んだ方がいいんじゃないか。
本気でそんな事を考え出した俺は飯もまともに喉を通らなかった。
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