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薄暗い店内に入ると青や緑のライトが空間の所々を照らして独特の雰囲気を作り出している。
赤やピンクを使っていない分、ここは他に店と違って落ち着いて飲むことができ、僕は案外気に入ってた。
「初めてのバーはどう?楽しい?」
「なんて言うか……、もっとうるさいと思ってた」
「他は大体そうかな。でもここは珍しく、静かに飲める店なんだ」
プライベートで呑むのは何年振りだろう?
僕達はカウンターに座って時折言葉を交わしながら飲み物を口に運ぶ。
仕事じゃないと思うと同じお酒でも妙に美味しく感じて僕は自然に飲むペースが速くなっていった。
「なぁ…飲み過ぎじゃないか?」
「ん~?平気だってこれくらい。なんなら蓮も飲んでみる?」
「っ、飲むわけ無いだろ!?あんたほどほどにしとけって」
「嫌だね。まだ飲みたい。帰りたいなら蓮1人で帰れば?」
「あんたを1人にして帰れるわけ無いだろ?ほら、もう駄目だって」
蓮に取り上げられたグラスを取り返し、僕は意地になってそれを飲み干す。
普段ならこんな飲み方はしない。だけどこうやって好きにお酒を飲める機会なんて滅多にないから気が大きくなる。
お客に気を使う必要もないし、いざとなったら蓮がどうにかしてくれるだろうから。
そんな考えがあったからか尚更気兼ねなく楽しんでいると、僕を心配する声が次第に頭の中で響くような感覚になった。
「れーん……、飲み過ぎたかも…」
「お、おい…!」
「蓮がいっぱいいるー…」
少なくとも3人。いや、4人?
視界がぐるぐる回り、心臓がドクドク音を立てて力が抜けていく。
そんな時ふと、可笑しな考えが浮かんだ。
僕らは万華鏡の世界に閉じ込められたのかもしれない。
色んな色の欠片が混ざって合わさり、二度と同じ模様は見られない。
それはまるでこの街と同じだ。
今日話した相手が明日は死んでるなんて事もある。
今は楽しくても数時間後には地獄の最中にいるかも。
誰もがそんな不安を抱えて毎日を過ごしてる。
「だから何回も止めたのに…!帰るぞ雅!」
「蓮ー」
「危なっ…!」
身体を支える事ができなくなった僕は蓮に寄りかかり、彼は僕がイスから落ちないように慌てて腕を回した。
「…………」
守られてる安心感。蓮の胸に顔を埋めると彼の匂いが僕を心地良く包み込んでくれる。
ちょっとだけ休みたい。
まだ現実には戻りたくない。
帰りたくないなぁ…。
「雅、歩けるか?」
「ん……外…?」
ひんやりした風に頬を撫でられて薄目を開けると夜の光がちらほら映る。
いつの間にか僕は店の外の壁に凭れて座っていた。
歩けると言えば歩ける。
だけどお酒のせいだ。
心臓が壊れそうなくらい大きく鼓動を打って熱を体内に送る。
それが自制の効かない今の僕に情欲を感じさせ、僕の肩に触れる手、耳に入る声、心地の良いの匂い、彼の全てが無性に欲しくなり……
「……歩けない。あそこに連れてって」
目に付いた一つの建物を指差した。
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