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【5章 バスルーム】香り
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「潤」
僕が潤に寄り添うと、互いの裸の全身が触れ合って、気持ちよかった。
「欲しい」
僕はうっとりして、潤に言った。
「まわす?」
潤が怯えた顔で言った。
「え? なんで? そんなことしないよ?」
僕は驚いた。
「お風呂入ろう?」
僕は、潤を誘って、風呂場の折戸を押し開けた。
温かそうな湯気が湯船からゆったりと立ち上っていた。
振り返ると潤は、洗面台の棚から 荒い白い粉末の瓶を取って、ガラス製の小さなボウルに入れ、小瓶から液体を数滴垂らして、混ぜていた。
潤が、その粉末を湯船に入れると、濃厚でエキゾチックな甘い香りが広がった。
「何を入れたの?」
「バスソルト」
潤は、ボウルを棚に戻してから戻ってきた。
「女の子みたいな趣味だね」
と僕が言うと、潤は、
「違うよ、ママンがいつもそうしてるから」
と答えてから、顔を赤くした。
やっぱり、譲が言ってたことの何割かは、本当なのかも、と思ったけれど、まだ、確かではなく、本当でない方がいいことなので、黙っていた。
「潤の匂いだ」
と僕は言った。
「そう?」
「うん」
僕らは、風呂場に入り、ドアを閉めた。
二人で、生まれたままの姿で、甘い香りの漂う密室にいるのは、それだけでうっとりすることだった。
僕は、蛇口をひねり、シャワーのお湯を潤の身体にかけた。
潤の身体に水流ができ、潤は、手で自分の身体を撫でた。
「 湯船入ろうか?」
僕は、見ていると我慢できなくなり、お湯を止めて、誘った。
潤は、頷いて、自分から湯船に入り、腰をおろして脚を投げ出して座ると、慣れた仕草で、僕に手を差し出した。
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