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「木葉さん、好きです。」
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「あかーし!一緒にご飯食べに行こう!」
朝になり目が覚め、スマホを見るとそんなメッセージが送られてきていた。いつもこの人は突然だ。しかし2年間振り回されたおかげか、特になんとも思わなくなっていた。
特に断る理由もなかったため、「明後日の夜なら空いてますよ。」と返信しておいた。
◇◆◇◆◇◆
待ち合わせは梟谷高校の校門前。部活終わりにすぐさま向かうと木兎がいた。
「お疲れ様です、木兎さん。」
「お、あかーしー!おつかれー!」
「木兎さんっていつまでも木兎さんって感じですよね。」
「ん?俺はずっと俺だぞ!」
「ふ、そうですね。」
次の瞬間だった。
「……これで、いいよな?」
木兎は誰かに話しかけているようだった。
すると電柱から現れ、こちらへ向かってきた。
被っていたフードが取られるとそこには1年前まで隣でたくさんのことを共にしてきた人間がいた。
その顔は緊張しているような、悲しそうな、表現し難い表情を見せていた。
「木葉、さん……」
「ごめん、赤葦。騙したりして。」
「あかーし、話は木葉から聞いてる。……俺は関係ない人間だからなにも言えねーけど、お互い気持ちはぶつけた方がいいとは思う。」
そう言うと木兎は去った。木葉に(ガンバレ)とアイコンタクトを送りながら。
ここじゃなんだし、と無人の体育館へ向かった。
体育館に着くまで沈黙が訪れた。おそらく実際は数十秒だろうが、体感としてはそれどころではなかった。
体育館に着くとその沈黙を破り、口を開いたのは木葉だった。
「俺さ、赤葦のことやっぱり忘れらんないみたいだわ。」
ズシン、ときた。あんなにひどいことを言ったのに、最低な態度を取ったのに、1年経ってもそんなふうに思われていたことを知った途端、赤葦は視界が滲み出した。思わず俯く。
「……馬鹿なんじゃないですか。何度言っても同じですよ、遊び以外の理由なんてないです。」
「違う。……赤葦は俺のために、色々してくれた。たくさん助けてもらった。……全部、遊びだったなんて嘘だ。」
そんな真っ直ぐな目で見ないで。せっかく心に決めたのに、貴方の本当の幸せを願おうとしてるのに、揺るがさないでくれ。
「それは全部、気まぐれであって……」
「じゃあなんで赤葦は今にも泣きそうなんだよ。」
木葉の方を見ると、涙をためていたのは向こうも同じだった。
「……なんで、そんな嘘つくんだよ……。馬鹿なのは赤葦の方だろ……!」
好きな人の目からぼろぼろと涙がこぼれ落ちた。初めて見た泣き顔のせいで罪悪感が膨らむ。
あのときは泣き顔を見ずに済んだから、上手くいったのだと痛感した。
「ごめ……なさい……。ごめん……なさい……!」
ついに自身さえもダムが決壊してしまった。目を押さえても次々と溢れ出す。
「俺、木葉さんの隣にいていいのかって……隣にいたら、木葉さんの幸せを壊すんじゃないかって思って……考えれば考えるほど、いない方がいいって……それが木葉さんのためだって……」
「そんなの幸せじゃない!!」
今まで聞いたことのないほどの叫び声に、思わず身をすくめた。
「俺は赤葦がいない人生なんて、幸せなんて、嫌だ……!なんでそんなこと思ったんだよ……なにが幸せかは、俺が選ぶ!」
本当に、その通りだ。と赤葦は思った。好きな人のことを考えるばかりに行きすぎたことをしてしまった。小さな子供じゃない1人の人間、それも年上だ。
「俺は好きだよ……ずっと好きだよ、お願いだから、あのときみたいに一緒にいたいんだ……。」
「俺も……木葉さんと、ずっといたいです……。」
木葉は親指で赤葦の目尻を拭いてやり、言った。
「じゃあ、あの言葉は無しな……!」
「……はい。」
ずっと赤葦が木葉を守る立場の気でいたが、今回ばかりはそうはいかなかった。
好きな人のためにいつもスマートにいたかったが、とんだ醜態を晒すことになってしまった。だが、不思議と後悔はない。
「ちゃんと、仕切り直しさせてください。」
目は腫れてるし、周りは赤いし、鼻はグズグズだしで良いとは言えない身なりだった。
涙を拭い、木葉の目をまっすぐ見つめ、微笑しながら言った。
「木葉さん、好きです。」
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