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特別番外編 『野球観戦に行ってみたら⑨』
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いよいよ試合が始まった。
僕達の席は内野席なので、打球の行方がよく分かる。
投げて球の速さに、守備の華麗さに、アウトカウントが増えるごとに僕達も周囲も歓声を上げる。
裏の攻撃も初回から波に乗ってランナーセカンドのチャンス到来だ。
バッターボックスには今年シャークに戻ってきた四番、古井選手だ。
得点圏で強い選手。
どうか先制点を…!
「かっとばせ~、ふ、る、い!!」
カキィーィーンッ
「あ…っ!」
打球はセンターの頭上を越えて行った。
ランナーはホームを踏んで、古井選手はセカンドに。
球場全体が大歓声に包まれる。
「やった~!!」
ふ、る、い!ふ、る、い!いいぞ、いいぞ、ふ、る、い~!
得点が入って歓喜の歌を皆で歌う。
「今日もシャークは、かーち、かーち、かっちかち!ばんざーい、ばんざーい、ばんざーい!!」
おじさんとカンフーバットを合わせて歓び合うと同時に周囲の人とも行う。
…行うわけなんだけど…。
「キャー、良かったですね~!」
「私も~キャー!」
おじさんの周囲は尋常じゃないほどに女の人が集まってしまって、ガンガンとカンフーバットを合わせている。
このどさくさ紛れに女の人のパワー全開のアピールが凄まじい。
僕は嫉妬を通り越して、おじさんの安否を気にかけてしまう。
「ほら。他の人も僕達も試合が見えないら、ね?」
応援頑張ろうと、おじさんの光輝く笑顔に女の人達もうっとりしながら「はいっ!」とお利口に座席へと戻っていった。
「ふうっ。パワー凄いな」
お疲れ様です。おじさん。
「結斗とふたり、のんびり観戦がしたかったのにな。何だか変な事に…」
おじさんが小声で不満を口にしている。
複雑な心境だけど、おじさんがモテる様子を見ていると少し自慢したい気持ちがムクムク沸いてくる。
僕の恋人なんですって!
だけど、誰も信じてくれないよね。
チラリと隣のおじさんを見つめる。
横顔も文句なくカッコいい。
睫毛長いし、鼻も形良くて高いし、唇も吸い寄せられそうな…ハッ!
野球、野球。
僕は野球を観に来たのに~。
シャークの応援しに来たのに…なんで海里おじさんの事ばっかり。
お、落ち着かん。
「僕、飲み物買って来るけぇ…。おじさんなんか欲しいもんある?」
「…結斗、方言出てる」
「あ」
本当だ。
僕。変な意味で疲れてるんだなぁ~。
「地元に戻ったので。たまには…で、飲み物」
「あぁ。俺も行くよ」
おじさんが立ち上がる。
そのスラリとした立ち姿に周囲の視線が釘付け。
ホウッ…と溜め息も溢れたのは勿論です。
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