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その光は
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帰ってくると、佑哉は上機嫌に編み物をしていて、海人はぎこちなく動いてた
佑哉に近寄ると編み物を見せてくる
青と水色と白の波が描かれた飾り編み
何度も思うのだが、本も何も読むことなく編み物をできてしまう佑哉は、すごいと思う一方、果たしてそれでいいのかと思ってしまう
それを知っているのか知らないのか、佑哉は楽しそうだ
「何で楽しそうなんだ?」
「ソラは喜んでくれるかなって、考えたら嬉しくてさ」
…俺?
俺のために編んでたのか…
少しだけ、嬉しい気がした
「佑哉さん俺のも作ってくださいよー!」
奥の方で海人が叫ぶ
佑哉は手を止め考えているようだ
「海人には…うーん、手袋かな。冷え性だし。でも、取り組めそうなのは一週間後かな。待っててくれたら、その分頑張って、いいもの仕上げられるように頑張るよ」
そう言うと、また俺の編み物に取りかかった
楽しそうだ
俺も嬉しい
鼻唄を歌いながら編み続けてる佑哉をあとに、部屋の奥へと向かう
そして、目の前にはぎこちない動きの海人…
「田崎は何を…」
「少しでもいいものにして、お客さんに見せたいらしくて、ダンスを頑張ってるよ」
ダンスって、海人の今の動きじゃ、壊れたロボットだろう…
少なくとも俺の元居た店では殺されてるクオリティだ
ダンスを見せろと言う客は少なかったが、誘惑するために、生きるためには何でもできなきゃいけなかった
そこから客の求めるキャラのできる範囲のものを見せていかなければいけない
…もうここは店ではないにせよ、海人のそれはダメだろう
大体、roseは音楽グループだろうに
海人の両肩を掴む
「なんだよ、ソラ」
「ここは動かさず動け」
「え、無理だろ」
「無理じゃない」
そのまま、ゆっくりと腰と上半身を使って円を描く
できた海人は驚いてるみたいだ
俺も少しだけ嬉しい
不意に、海人が言った
「な、ソラ、踊って見せてくれるか??一連の流れ」
「踊り?」
「参考にさせてもらいたいし」
参考?
見せても別に構わないが…
「ソラの踊り、僕も見たいな」
普段は最小限の動きに押さえてクオリティの良くないroseに混じることで目立たないようにしてるが、この二人になら見せてもいいか…
たぶん、佑哉も海人もそれを見たいのだろう
「本気で踊っていいのか?」
「うん」
「頼むわ」
音が鳴り出す
リズムをとらえて、その通りに、大きく動く
感情を入れて、妖艶さを出して
誰もまばたきすらできなくさせる
佑哉も海人も見とれてる
曲が終わるまで、止めさせるものか
我に返らせるものか
曲のよいところを納め、一番よい瞬間で振りを変えてゆく
最後はターンして、止める
佑哉がまた、床にへたりこんでる
あいつは俺の歌を聴いても、俺の踊りを見ても、何か吸いとられたようになってる
海人はまだぼーっとしてるみたいだ
不思議と、この二人に見せるのは気分がよかった
「ソラ、今度一緒に踊ってくれる?僕も海人ももっとうまくなりたい」
「そうだよ、ソラ、教えてくれよ」
「…三人のときだけなら」
楽しそうに二人は笑った
俺も笑ってた
一緒にいて、楽しい
嬉しい
心地いい
どう言葉を使っても伝わらないだろうこの瞬間
俺は意識を失った
目が覚めると、海人も佑哉もいなかった
そして、俺のために編まれたはずの毛布は、ナイフのようなものでズタズタに裂かれていた
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