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過去3
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侑紀は笑わなくなった。
話さなくなった。
母の罵詈雑言を無表情で聞き流すようになった。
学校でも全くといっていいほど誰とも関わらない。
裏切られるのが怖いから。
ただ、時折歌を紡ぐだけ。
侑菜は自分の片割れである侑紀のことだけが大切だった。
侑紀がそんな状態なのを許すはずがない。
6歳の幼子でも頭の回転が異常に速い侑菜は侑紀のことを救おうとしていた。
「侑紀、私いいこと思い付いたの。」
ある日、侑菜がいたずらな笑みを浮かべ侑紀に話しかけた。
この頃になると侑紀に優しく接してくれるのは侑菜だけだった。
優しい父の和史は仕事で地方に転勤しているため唯一味方になってくれそうな人が近くにいないからだった。
「何?姉ちゃん。」
不思議そうな虚ろな顔をする侑紀に侑菜はニヤリと笑う。
「侑紀、病気の演技をして。一週間後にお父さんが帰ってくるから。きっと侑紀がそんなだったら心配性のお父さんは田舎のおばあちゃんのところに預けると思うの。侑紀ならそれくらいできるでしょ?」
勝ち気な笑みを浮かべる侑菜に侑紀はぎこちない笑みを返す。
「うん。…でも、母さんはどうするの?」
その言葉に侑菜が覚悟を決めたような、諦めの混じったようなよくわからない表情をした。
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