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まるで、本物の王子様 side.侑紀
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スタジオでは柊さんと来宮さんの撮影が終わったようだった。
監督と少し言葉を交わした後、視界には諒さんが入る。
黒い燕尾服をきっちりと着たその姿はまるで、本物の王子様。
雫谷恭一郎様は刑事でしたよね?
すっごい、かっこいい…!
「yu-ki*さん、少し次のシーンの打ち合わせをしてもいいですか?」
諒さんが近づいてきてくれてちょっとだけ、嬉しかったのに他人行儀な態度に少し、悲しくなる。
仕方がない。
俺は今、榊原侑紀ではない。
yu-ki*なのだ。
「はい、柊さん。」
スタジオの端の方に寄る。
「侑紀、大丈夫か?朝の覚えてる?」
周りに人がいないことを確認して諒さんが家にいるときのように話しかけてくれた。
「大丈夫ですよ。俺、覚えるのは得意なんです。」
「そうなの?」
「はい!」
わざとふざけて見せて、諒さんを安心させる。
実はまだちょっとだけ不安だ。
「じゃあ、柊さんとyu-ki*ちゃんのシーンを撮ります!スタンバイよろしくお願いします‼︎」
助監督さんの声がかかり俺と諒さんはそれぞれのメイクさんの元へ向かう。
今撮るシーンは何も知らされずに、舞踏会場まで連れてこられた水那が恭一郎にダンスに誘われるところ。
少し、メイクの直しが入った後セット内に入る。
「それでは、いきまーす!3、2、1、アクション!」
『恭一郎様!?何故私をこちらにお連れになられたのですか?』
舞踏会で女性を連れてくるというのは結婚相手を紹介するようなもの。
恭一郎は刑事をしているが、実家は政界に何人も輩出している名家だ。
その本家の息子である彼が水那のような女性を連れてきていいわけがない。
『君を俺の恋人だと皆に紹介したくてね。』
『駄目です!私のようなものが恭一郎様の恋人なんて世間の皆様が認めるわけがございません。』
『それでもね、水那。』
すっと恭一郎が水那の前で跪く。
そしてそっと手を差し出す。
『水那。俺は周りがなんと言おうとも、君を手放すつもりはない。俺は身分で付き合う相手を決めたりしない。君自身に俺は惚れたんだよ。』
『恭一郎様……。』
水那の顔は赤くなり、熱くなっていく。
『何があっても君は俺が守るよ。だから、この手を取っておくれ。水那。』
水那の目には涙がうかぶ。
『私も…。私も恭一郎様をお守りしたいです。』
恐る恐る、といった風にゆっくりと水那は恭一郎の手を取る。
『不束者ですが、よろしくお願いします。』
握った手を恭一郎が強く握り返してくる。
安心させるように。
この力強さは水那を安心させるため?
それとも俺を安心させるため?
この力強さは恭一郎のもの?
それとも諒さんのもの?
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