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耳が赤い
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コンビニから家まで車で20分程度。
走り出してからずっと、袮緒は外を見ていた。
「袮緒?」
「なんですか?」
俺の問いかけに、袮緒の視線は動かない。
外を向いたまま、出会ったころのような素っ気ない答え方をした。
「なんでずっと外、見てんだ?」
袮緒は黙ったまま、俺の質問には答えない。
「なぁ……」
催促する俺の言葉に、袮緒は、あぁーっと小さく呻きながら俯く。
急に頭を上げると、キッと俺を睨みつけた。
「触りたくなるから、抱きしめたくなるから……キス、したくなるからっ」
俺を恨めしそうに見ながら、吐き捨てるように言葉を放った。
口を手で覆い、袮緒の視線は、また、外に逃れる。耳が、赤い。
ははっ……可愛い。
俺は、思わず、笑い声を立ててしまった。
「笑わないで下さいっ」
少し怒りを孕んだ様な、拗ねた袮緒の言葉。今の俺には可愛く感じるだけだった。
俺は黙って、手をコンソールボックス辺りに差し出し、軽くコンコンっと叩く。
音に視線を向けた袮緒は、そっと俺の手に掴まえる。
袮緒の手を愛でるように俺は、ゆっくりと指を絡める。
「なんか……エロいですよ、須栗さん」
袮緒は単調に言葉を放つ。視線は相変わらず、外に向けたまま。耳も、赤いまま。
「だって、エロいことしてぇし」
ストレートに言い放った俺の言葉に、袮緒は窓に向かい、ため息を吐いた。
家の駐車場に車を入れる。
態度とは裏腹に、袮緒の手は、名残惜しそうに俺から離れた。
鉄筋コンクリート3階建て、総戸数12部屋のマンション。
俺の家は1階でエントランスとは逆の角部屋。間取りは1ルーム。
鍵を開け、俺が先に玄関に入る。
靴を脱いで、一歩踏み出そうとした瞬間、後ろからギュッと腰を抱かれた。
「袮緒?」
袮緒はゆっくりと俺の肩に頭を預ける。
「どうした?」
「なんでもない……ちょっとだけ……」
俺はそのまま黙って袮緒の腕の中に居た。
右手で俺の肩辺りに項垂れている袮緒の頭を優しく、くしゃっと撫ぜた。
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