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神楽
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それまで盛んに行き来していた人の流れが段々と緩やかになってきていた。時計を見ると、23時55分。あと5分で今年が終わる。
「俺たちもどこかで止まって年越ししようか」
「ああ、そうだな」
月詠たちもさっき少し話したら、すぐに2人でどこかへ歩いていった。
「どこがいいかな。道の端もみんな立ち止まってるね」
「……あ」
1箇所、年末年始はどこもかしこも人でごった返すこの神社の中で滅多に人が集まらない場所があった。
「桜和、こっち」
繋いでいた手を引くと、桜和は驚いた顔で俺を見た。なかなか歩き出さない。
「えっ、神楽どこ行くの? そっちは境内の方じゃん。もっと人多いと思うけど」
「大丈夫だから、早くしろ。年明けるぞ」
寒空の下、両脇に大勢の人が立ち止まる道を抜けて、見えてきた人垣の手前を左に曲がる。人が減ってきたら右に曲がって、拝殿の裏手に回る。そこからまっすぐ歩くと、前にまた別の建物が見えてきた。
「何あれ? 参拝するところとは違うよね?」
「本殿。神様がいるところ。……この神社、拝殿から本殿までが少し離れているから、本殿の場所を知らない人が多いんだ」
現に、ここはあまり人がいない。後ろでは参拝客の賑やかな笑い声や、屋台の客寄せの声、和楽器の音が飛び交っているのに。
「でもさ、神楽。こんなところまで来ていいの?」
「何も本殿の中に入るわけじゃないんだ、大丈夫だと思う」
「神楽が確証のないことを言うなんて珍しいね」
桜和が小さく笑う気配がした。確かに、そうかもしれない。
「昔、今はフランスにいるおじいさんが連れてきてくれたんだ。ここは神楽の音がよく聴こえるからって」
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