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味気ない昼食
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滞りなく進んだ午前中の作業も、昼が近付くにつれてみんな少しずつ緩くなっていく。原因は空腹だけじゃない筈だ。
「……早めに昼食べておこう」
「そうデスね」
まだ11時半だが、昼以降のいつ和音さんが来るかわからない。みんなも作業効率が落ちてきているのだから、気分転換に手を休めた方がいいだろう。
──ピコン
鞄から弁当を取り出そうとした時、電子音が鳴った。俺の鞄の中からだ。
「神楽会長が電源落とし忘れるなんて珍しいデスね」
「ああ……」
メッセージを受け取った画面が点灯していた。宛名は──
「……」
短く返事を打ってスマホの電源を落とす。手早く弁当の包みを開いて小さくいただきます、と手を合わせた。
卵焼きも、唐揚げも、少し味気なく感じたのは、味付けの問題ではないだろう。
「──風見先生のところに行ってくる」
さっさと昼を食べ終え、席を立った俺に特別違和感を感じることは無かったらしく、少し視線を寄越すだけで誰も怪訝な顔はしなかった。
「はーい」
行ってらっしゃーい、と軽く送り出され、会室を出る。パタンと閉じた扉に寄り掛かり、大きく息を吐いた。
「……よし」
一歩踏み出そうと背を離した瞬間、扉が一緒についてきた。
「──っわ!?」
「えっ、あ、す、すみません、居ると思わなくて……っ」
振り返ると、隙間から鵜野があわあわと覗いていた。
「いや、俺が悪かった。何ともないか?」
「だ、大丈夫です。会長はどうしたんですか……?」
「ああ、いや、ずっと座っていたから、少し立ち眩みがしただけだ。もう大丈夫」
外に出てから改めてすみませんと謝る鵜野に、悪くないから謝るなと言って職員室の方へ向かった。
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