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カフェに着いたのは、もう夕方近くになっていた。
この時間にくるのは初めてだが、ミヤくんはいるだろうか?
既に混雑のピークを過ぎた店内は、それでもまだ割りとたくさんの女性客で賑わっている。
比較的スムーズに席に通され、ぐるりと店内を見渡す。
が、お目当ての彼は、見つけられない。
朝からバイトに入っていたとしたら、もう上がってしまったのだろうか。
それとも、タイミング悪く休憩か。
落胆した気持ちで、メニューに視線を落とす。
普段は心躍る筈の美味しそうなスイーツの写真は、彼がいないだけで輝きを失って見えた。
自分がまさか、こんなに重症だったなんて。
だからと言ってこのタイミングで帰る訳にもいかず、相変わらずのメニューをオーダーする。
いつもならミヤくんの働く姿を見ながら待つから、混雑していてもあっという間に感じる待ち時間は、何だかとても長く感じられた。
そもそも、僕はミヤくんの事を何も知らない。
学生っぽいとか、ミヤは名字の一部かも、なんて、全て僕の想像でしかなくて。
僕に向けられる笑顔は、勿論“お客様用”のそれで。
彼が本当に笑った時の表情なんて、知ることも出来ない。
もしも彼がここを辞めたら、挨拶どころか、姿を見かけることすら出来ない関係。
もしも僕がここに来なければ、彼の記憶の片隅にすら残らない関係。
急に現実を突きつけられて、胸の辺りが握り潰されるように、ギュッと痛んだ。
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