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昼下がり 4
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気付くと、もう夕方とも呼べる時間で。
まさか、真っ昼間からこんなことをしてしまうとは。
あまりの恥ずかしさに、布団から顔を出せない。
今日の出来事で、取り敢えず一つ学んだ。
本宮くんのスイッチは、軽卒に入れてはいけない。
結局あの後、本宮くんは三回も僕と繋がったまま射精した。
ゴム越しにビクビクと本宮くんが震えるたび、愛される悦びを享受して。
その間、僕も二度も出させられたけど、たぶん、後ろでも、何度も軽くイかされたと思う。
“たぶん”と言うのは、もう意識もあやふやで、自分でも訳が分からなかったから。
喉が渇いて水を飲みたいけれど、僕一人ではどうにも動けそうにない。
隣で幸せそうに穏やかな寝息を立てる本宮くんが少しだけ憎たらしくて、何とか動かした足でゲシッと蹴りつける。
けれど、力の入らないそれは、あまり効果が無いらしい。
「んー?
よしよし…」
寝惚けながら、僕の背中をポンポンと叩き、赤ちゃんでもあやすようにしながら、本宮くんは相変わらず眠りから醒めない。
さすがに僕も苛っときて、彼の頬をムニッと摘まむ。
誰のせいでこうなったと思っているのか。
「将吾さん、どーしたんですか?
痛いですよ」
やっと目覚めた本宮くんが、たいして痛くもなさそうに言う。
「喉渇いた。
動けない。
水取って」
わざとぶっきらぼうに、短く用件を伝える。
「真っ昼間から無理させちゃいましたね。
ごめんなさい」
口ではそう言っても、全く悪びれる様子はない。
「誰のせいだと思ってるの…?」
抱き起こされて水を受け取って、少しだけ本宮くんを睨む。
突き出た唇をツンとつつかれ、微笑まれる。
「んー、強いて言うなら、将吾さんが可愛すぎるせい?」
小首を傾げて言われて、普段ならそれも可愛いんだけど、ちょっとムカつく。
「本宮くん嫌い。
もーシない」
前なら、冗談でも“嫌い”なんて言えなかったけど。
少しだけ愛されることに慣れてしまったのか、ついついそんな言葉が口から漏れる。
「ごめんなさい、それはヤダ!
今度から気を付けるから、許して?」
僕の言葉に漸く謝ってきた本宮くんに、ちょっと不安が沸き上がる。
僕が怒ってても平気なのに、“シない”って言われて慌てるなんて、今は男の身体に興味があるだけ?
違うよね?
「そんなに…セックス…気持ちいいの…?」
あふれ出た不安は、涙声で。
やっぱり、僕なんて。
ネガティブな感情が暗く渦を巻く。
「将吾さん?
ごめんなさい、そんなに嫌でした?
将吾さんは、気持ち良くなれなかった?」
「そう言う訳じゃないけど。
でも…身体だけは…イヤ…」
もう、怒りなんて忘れていた。
嫌われたくない。
ただ、それだけ。
目の前の広い胸にすがり付く。
「身体だけな訳、ないでしょ?」
「だって、さっきまでは平然としてたのに、“シない”って言ったら、急に謝るから…」
しがみついてごねる僕の背中を、本宮くんがポンポンと撫でてくれて、促されるように不安を吐露する。
「ごめんなさい、俺の言い方が悪かったです。
俺がヤダって言ったのは、“嫌い”って言われたから。
確かにセックスは気持ち良かったけど、それは相手が将吾さんだからです。
将吾さんだからシたくなるし、将吾さんだから歯止めが効かなくなるんです。
でも、将吾さんが嫌なら、我慢します。
将吾さんに嫌われるのが、一番キツイから」
正面から見詰められ、真剣な顔で言われて。
そうだった、本宮くんはちゃんと僕を見てくれる人だった。
そう気付く。
「ううん、僕こそ、ごめんね。
“嫌い”なんて、嘘だよ。
大好き」
「ありがとうございます。
不安にさせてごめんなさい。
俺も気を付けるけど、将吾さんも、また不安になる前にちゃんと教えてくださいね」
「うん、ありがと」
本宮くんの指先が、僕の涙を拭う。
ゆったりと優しく口付けられて。
穏やかな気持ちでそれを受けた。
安心したら、くぅっとお腹が鳴ってしまった。
「お腹空きましたね。
何か作るから、ちょっと待っててください」
恥ずかしくて赤くなる顔を俯けるが、本宮くんは笑ったりせずに柔らかく微笑んでくれた。
さっきの“嫌い”がよほど堪えたのか、本宮くんは食事の最中ずっとくっついてて。
「食べづらいよ…」
「お願い、今日は我慢してください」
流石に呆れて言ったら、そう返される。
それがまた、尻尾の垂れ下がった大型犬みたいで憎めない。
ちょっと泣いてしまったけれど、結局二人で“好き”を再確認出来て。
喧嘩ってわけじゃないけど、たまには言い合うのもいいのかもなんて思った。
―――――end―――――
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