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巡り逢う4
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とにかく頭が痛い。
響はフラフラする身体を引きずりながら、生徒会室へと向かっていた。
別に風邪なわけでも体調が悪いわけでもない。ただ、寝不足なだけなのだ、が。
先週の打ち合わせで芳士と会ってから、とにかく寝つきは悪いわ寝ても嫌な夢を見てすぐ目が覚めるわでここ数日響は睡眠というものをろくにとっていなかった。
(月曜日からこのしんどさなんて…最悪ですね…)
これから一週間、持つ気がしない。
(ただでさえ来週には体育大会も控えていて忙しい時期なんですから、気を引き締めないと…)
体調を崩して休みでもしたら、それこそ生徒会に迷惑をかけてしまう。
「おはようございます」
「はよ」
寝不足を悟られないよう、なるべく元気に見えるようにと最新の注意をはらって入った生徒会室には、珍しく顧問教師である敦賀しかいなかった。
「珍しいですね、先生が朝早くからここにいるなんて」
「ああ、ちょっと厄介なことになってな。学校側が考えている予算と、俺たちが降りると思っていた予算が違っていたらしい。俺たちだけならなんとかなるんだが、今度の体育大会は二校合同だからな。なんとしてでもどうにかしねえといけない」
「それはまた面倒な…」
「今渚と朝倉が交渉に行ってるが、半分は俺のミスだ。どうにもこうにもならなかったときは俺がどうにかする。それでだ、響」
敦賀の目が真っ直ぐに響を見る。こういう時の敦賀は、本気で仕事モードに入っている時だ。
「本来なら今日の放課後の成徳との打ち合わせ、渚が行く予定だったんだが、恐らくこの予算の件が放課後までに終わらない。で、成徳のほうは役職関係なく誰か一人を代表によこしてくれたらいいと言ってくれているが、予算のほうは確実に会長の印がいる」
「つまり、私にその打ち合わせに行けと?」
「そういうことだ。蓮に行かせてもいいんだが、あいつよりお前のほうが其の手のことはうまくいきそうだからな。頼めるか?」
頼むも何も、行くしかないだろう。会長がどれほど多忙かは自分自身が一番よくわかっているし、蓮にコミュニケーション能力がないのも見ていればわかる。
それに、仕事に私情を挟むわけにはいかない。
「わかりました。ちなみに場所は?」
「成徳の生徒会室だ。お前は去年の打ち合わせでも行ったことがあるから大丈夫だとは思うが、一応5時に校門前で向こうの役員の誰かが待っていてくれるらしい」
「そうですか、なら確実ですね」
その「誰か」が誰なのか、一番知りたかったのだけど。
「では、私は今日の授業終了後すぐにそちらへ向かうので、こちらには顔を出せないと思いますが」
「構わない。お前のする予定だった仕事も出来るだけほかにまわしておく」
「ありがとうございます」
それならば、この朝の時間に出来るだけ仕事を終わらせておかなければ…。
この時期忙しいのは誰だって一緒なのだ。なるべく人の負担を増やしたくはない。
と、自分の席につこうと踵を返したとき、不意に敦賀に肩を掴まれた。
「おい、お前大丈夫か?顔色悪いぞ」
「…そうですか?気のせいだと思いますけど」
「今朝、渚もお前を心配してた。先週の打ち合わせのあとから、なんだか様子が変だと」
「………」
響は、思わずつきそうになった溜息を必死で呑み込んだ。
ーーーやはり、あの会長は侮れない。
(にこにこと何も考えてないような顔をして、実は気付いてたんですね)
あの日の帰り、響が一人で帰ることを選んだ不自然さに。
「会長は心配性ですからね。気を使って頂けるのはありがたいですが、気のせいですので。大丈夫です」
言いながら肩に置かれた敦賀の手を離すと、今度こそ自分の席について積まれた書類の確認を始めた。背後から、敦賀のため息が聞こえてきたが、聞こえていないふりをする。
だって。
(言ったって、どうにもならないでしょう…?)
これは、自分の心の問題なのだから。
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