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斑ノ獣。
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俺にはまだ霊力をコントロールする能力がない。
体内にどれだけ溜め込んでいようがただの宝の持ち腐れ状態だ。
これを何とかするために、紅葉に協力してもらっているんだけど。
「正直、俺程の位になると霊力はそんなに必要じゃねえんだ。追加の妖力はあったほうが良いのは良いが、持っているこれでも十分だからな」
むしろ、十二分だ。
「けど、世の中にはそんな力を持たない奴のほうが多い。そしてそういう奴はほとんど確実に楽をして強くなろうとする」
人間の世界でも同じだろ?
その問いかけに、俺は無言を肯定とする。
「しかしな。『そういう奴』てのは大体大したことない。そもそもそんな簡単にいくかっつーんだ」
世の中は甘くない。
妖怪の世界も同じだ。
「で、お前も俺の弟子になったからには『そんな最期』は絶対に許さない」
殺されて、奪われるような。
俺はこれでもこっちでは名の知れた妖怪サマだからな。
「だから・・・」
しかし紅葉のその後に続くはずの言葉は塗りつぶされた。
しわがれた声によって。
「へェ、狐の野郎は弟子をとったのかよ・・・いやぁ、傑作だ傑作」
「・・・斑(まだら)、いや今は尾咲(おさき)か?」
「ま、まだら?お、おさき?」
どっちだ。
つか誰だ。
声のする方を見上げると・・・そう、見上げなければならなかった。
『そいつ』は街並みの中、高く突き出した煙突のようなものの上に座って・・・?いたのである。
・・・あの、蛙座りつったら分かるかな・・・。
ケツつけないで座って、両手を前についてるような、そんな感じ。
某Z指定暗殺ゲームの主人公の座り方だ。
タカの目とか使えるんじゃない?
二作目以降なら多分泳げる。
しかもナイス逆光で、ちゃんと姿が見えない。
「待って紅葉。突然の新キャラの予感に動揺が隠せないよ」
「・・・紅葉、ねェ。いつからそんな可愛らしい呼ばれ方になったんだよ。どっちかてーとお前は野干(やかん:漢訳仏典に登場する狡猾な野獣)だろ」
「ぬかせよ。お前だって名前をいくつか持ってるだろうが。俺らは本名は無いものとするからな」
「ハッ。何でもいいけどさ、そっち、人間だろ」
「!!」
バレてんじゃん!!
ピンチじゃねえかこれ!!?
「・・・だったら?」
煽ンの!?
「・・・殺してイタダキマスだ」
乗ンの!?!?
「く、喰われる・・・!!」
バッ!!
その影はそこから飛び降りた。
鋭い、爪と牙を以って。
「・・・チッ」
ブワアアアアアアッ!!
紅葉が舞い上がる。
いきなり出てきたな。
演出激しいよ。
そんな俺の師匠の手にはもう、鋭く輝る(ひかる)刀が握られていた。
ダンッ!!
妖界の地面は土である。
アスファルトなんてとんでもない。
そんな妖怪の世界の地面を抉って(えぐって)。
『そいつ』は着地した。
「・・・久しぶりだな、狐野郎・・・いや紅葉だっけか?」
冷たく笑って。
「ハジメマシテ、人間」
そいつは。
紫のニット帽をかぶった、短い着物の猫耳青年は爪を光らせた。
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