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この手の中には
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ふと、なんでもない疑問。
『何で僕だったんだろう。』
喰種になったのも、全部。
僕は大して強くもなかったし、さして運が良かったわけでもない。
喰種に特別な感情だって抱いていなかったし、積極的に関わろうともしなかった。
それでも、選ばれたのは僕だった。
〝何故?〟
一つ一つ、僕の手から。
大切なものが、ポロポロと落ちていくような。
落ちたものを拾おうと動けば、また次が落ちていって、その繰り返し。
結局拾えず仕舞いで、僕はどんどん落としていくばかりだ。
そうやってそれを繰り返して、僕はどんどん無くしていく。
それはとても、大切なものなのに。
だから、落とさないように手を握った。それを大切に抱いて、離さないように、無くさないように。
例え敵が僕を切りつけてきても、殴ってきても、この手は緩めないし離さない。
無くしていくという痛みを僕は知っているから。もう無くしたくないから。
『何で僕なんだろう。』
特別裕福だったわけでも、幸せだったわけでもない。
ただ、普通に生きていただけ。
それじゃあ、ダメだったんだろうか。
なら、今度は守ってみよう。
握り締めた手をもっと握って。
敵か来たらその手で殴ればいい。
守らなくちゃ無くしてしまう。無くしてしまうのはとても辛い。
だから、僕は。
もっときっと、頑張らなくちゃいけないんだろう。
答えを知るのは、その先でいい。
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