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過去は還らない21
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ふと時計を見ると、そろそろ月山さんが帰ってくる時間になっていた。
「わっ、もうそんな時間…」
お湯を沸かして、暖炉に火をつけて。
外から帰ってきた月山さんが寒くないように、家中を暖かくした。
それが終われば、また椅子に座って本を開いた。
書かれた文字を目で追う。でも心はそわそわして内容が一向に頭に入ってこない。
月山さん、早く帰ってこないかな。
気がつけばそんなことを思っていて、一人顔を赤くした。
改めて思うことだけど、僕の生活にはもう月山さんが欠かせない。
今ではもう僕と話すただ一人の人物であり、恋人である月山さん。
最早僕の世界には彼しかいないと言っても過言じゃない。
彼がいなくなれば、僕はきっとこの世界では生きていけないだろう。
だから余計に愛おしくて、離れられない。
「はぁーあ…」
駄目だとわかってる。最低なことを思ってる自覚だってある。
でも、願わずにはいられない。
彼にも、僕しかいなくなってしまえばいいのに、と。
「…いや、」
それはただ依存し合いたいだけだ。逃げ場をなくして、一生ここに閉じ込めたいだけ。
それは叶わない。彼には彼の世界がある。
それに彼にとっても、もう僕はいなくてはならない存在なんだろう。
知ってる。だから、これ以上は口に出さない。
心の奥に鍵をかけて、あの頃の僕のように閉じ込めるんだ。
「…早く、帰ってこないかな…」
僕は一人じゃどうも弱気になってしまう。
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