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「なぁ、明日ってさ。おまえの誕生日やんか。何か欲しいもんあるか?」
「…は?」
―僕の欲しい物。
彼が使ってる歯みがき粉が、もうすぐなくなるなぁ、とか
箱ティッシュがあと1個になってたなー、とか
出来たら、沸くポットを年内に買い換えた方が良いよねぇ、とか
咄嗟に言われても、そんなことしか、思い浮かばない。
だって、僕はニートで。
同棲中の彼に食べさせて貰ってる。
だから、彼の日常に必要な物を買うのが、最優先で…
「何か、ないんか?」
「えーと…。沸くポットか、暖かいスリッパ、かな?」
「沸くポット?それっておまえだけが使うもんとちゃうやろ?つか、スリッパて。もっと、プレゼントっぽくて、フトコロが暖かい今しか買えんようなもん言えや。」
「で、でもさ?もう年末だし。僕、ホントに何も要らないから…。」
「とりま、靴下やな。それ、よう見たら穴あいとるで?」
「えっ!?」
僕は自分の足元を見て、ビックリした。
マジで踵に穴がある。しかも両方!
「ほな、行こか。」
「えっ?行くってどこへ!?」
上着を着た彼は、サッサと靴を履いて、出て行った。
僕は靴下をはき換えるのを諦めて、ピーコートをひっ掴み、慌てて彼の後を追っ掛けた。
とても大きなショッピングモールの中は、クリスマス一色で、たくさんの人で賑わっていた。
「なぁ。靴下って何階や?」
「いっつも買ってるのは、2階だよ。」
「ふぅん。」
彼は人混みがキライだ。
それに、ウロウロ歩き回って、比べたりとか、試着したりとか、そういうのをひどく面倒がる。
欲しい物は、ネット通販。もしくは確実に置いてあるお店に行って、ソレだけGETして帰る。それが付き合う前から変わらない、彼のスタイルだ。
「…あのさ。俺、あっこでタバコ吸うてくるから。その間に靴下見てくるか?」
「あ。うん、そうだね。じゃあ、ちょっと行ってくるよ。」
僕は急いで、靴下屋さんへ向かった。
『3足で、1000円』
そんな札のついた中から、パパッと同じ3足を選んで、レジへ持って行く。
彼の待つ喫煙所に行く途中、キレイな色のセーターに目がとまった。
―あれ、彼に似合いそうだな。
店の壁には『閉店半額セール』の文字。
「いらっしゃいませ。あちらのセーターですか?」
店員さんが出て来て、僕に言った。
「あ、はい。失礼ですけど、半額って、おいくらなのかな?って…」
「18000円の半額ですから、9000円ですね。」
―9000円かぁ。
ちょっと考えたけど。
クリスマス、だもんね。
意を決して財布を出そうとした時。
「おい。どこ行っとるねん!」
彼が僕の腕を掴んだ。
「探したで。靴下、買えたんか?」
「う、うん。買えた。」
「ほな、次行くで。」
サッサと歩き出した彼を追って、僕もエスカレーターに乗った。
「おまえさ。その財布、いつから使てるねん?」
「あ…。いつから、だっけ?」
訊かれて、僕も首を傾げた。
「今見たけど。相当年季入っとるな。」
―まさか!
「え、ちょ!もしかして、財布買う気?」
「そや。今やろ、今!」
彼がニヤッと笑う。
「ええぇぇええ~っ!?」
「イタリア製やて。これ、どないや?」
肌色っていうと変だけど。なんかそんな色の革製の長財布を渡された。
「わ。何コレ?」
触った感じが気持ちいい。
「コッチは?」
今度は、グレーに近い青だった。
「金の金具とかはちょっと…」
「中身は?」
「えっ?た、大して入ってないよ!?」
「金額の話とちゃうやろ!カードとか、小銭とか、どういうんが、使い良いかってことや。」
「あ…なるほど。」
散々見て廻ったけど。
「アカンな。またにしよか。」
彼に肩を叩かれて、外へ出た。
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