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ーー美術館に着くおよそ1時間前ーーーー…。
僕達はタクシーに乗り、急いで深雪さんの美術館へとむかっていた。
『着いたらまず、セッティングに関する打ち合わせでしょ、それからお昼頃には、今回の個展に協力してくれるパパの知り合いのデザイナーさんが来てくれるからその方とお話を………ねぇ、』
「……ん?聞いてるよ?セッティングの打ち合わせの後、デザイナーさんが来るんだろ?」
『うん、そう…………いや、そこじゃなくて、ちょっと運転手さん行き先変更するわ!』
「「?!?!」」
そう言って矢継ぎ早に別の住所を伝えると、車は美術館とは別方向に走り出し、お洒落なお店が建ち並ぶ道で停車した。
『ほら!早く行くわよ!』
「「は、はいっ!」」
有無を言わさぬその気迫に圧され、着いた場所は………
美容…院……?
店に入ると、広い店内にいくつもカット台が設置されていて、さらに奥にも部屋があるようだった。
「あら~~~!!深雪チャンじゃなぁい!いらっしゃーい♡」
『キャメルちゃん久しぶりー元気だった?』
深雪さんと親しげに話すその人は、美容師さん…?なのだろうか。キラキラしてて見るからにカリスマって感じだけど、、深雪さんより大きなような……
そんな事を考えていると、深雪さんが僕達の方へ向かってきて、、夜人さんの腕を掴み、キャメルさんの方へと引きずって行った。
『ちょっとお願いがあるんだけど、彼を頭の先からつま先までちょっといい感じにしてあげてほしいの!』
「あらぁイケメンね♡いいわよ。可愛くしてあげる」
「えっ、ちょ、深雪?!」
『いいから!そんな格好で大事なデザイナーに会うなんて失礼よ!』
渋る夜人さんの言葉をシャットアウトし、深雪さんがキャメルさんに託した。
そのまま、ガタイのいいキャメルと従業員さんに連行されて行くような夜人さんの後ろ姿を、僕はただ呆然と見つめていた。
だ…大丈夫かな…。
『大丈夫よ。』
はっ!また心を読まれた…!?
『まぁ、少なくともオネエになって帰って来ることは無いから!安心して。』
「は、はい…っ」
夜人さんが出来上がるまでの間、僕達は向かいのカフェで時間を潰すことにした。
『2人で話すのは、あの時以来かしら?…で、どうなの?』
「…ふぇ?」
唐突過ぎる振りに思わずおかしな声が出てしまった。
『ふふ、夜人とは順調か?ってことよ。』
「あ、…えと、………はい」
やばい、昨日のこと思い出しちゃった。
なんで、今思い出しちゃったの僕…!!
『…ふーん、そうかそうか。』
何故か得意げにうんうんと頷く深雪さんを見て、脳裏を一抹の不安がよぎった。
「あの……もしかして昨日…」
もし、あの時実は深雪さんが起きていたとしら……とんでもなくやばいことなわけで…。
『ん?何?』
焦りもない深雪さんの表情を見て、ほんとに知らないんだと心底安心した。
「いや、なんでもないです。」
『まぁ、そうね。……これからは、悪酔いでも夜中にアパートに押しかけるような真似は控えるから、安心してね。』
そう言ってにっこり笑う深雪さんを見て、背筋が凍りついた。
………………………………………。
それ………………やっぱり、起きてたってこと…ですよね?!
『あっ、電話!…もしもし?分かった。今から行くわ』
「あの、…深雪さん、すみませんでした…」
『?何言ってんのよ、気にしないで!他人に気使ってたら恋なんて出来ないんだから!ほら、戻るわよ。』
深雪さん強過ぎる……。
でも今はその男前ぶりに少し救われた気がした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
店に戻ると、キャメルさんが満足げな笑みを浮かべこちらへ向かって来た。
『彼、どんな感じかしら?』
「もうばっちり。とびきり可愛くしといたわ♡」
可愛く…?!やっぱりオネエに……?!
た、たとえオネエな夜人さんになってしまっても、僕は…夜人さんが好きだ…!!
そうは思っても、現実を受け止める覚悟が出来なくて見る前から目を覆っていた。
「………えっと、……お待たせ…」
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