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天邪鬼ロンリネス 03
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「神崎じゃなくて残念だったなぁ」
ニヤニヤと笑う相手に、悪寒がした。
空腹感が一気に消え失せる。
「い…いや…別に…」
「英語がどうかしたのか?」
「…どうも…しない…」
「お前、声小さくて何言ってるか分かんねえんだけど。」
この場から去りたい。しかし去った所で、八木の態度は変わらないだろう。
声を震わせ、一番疑問に思った事を口に出した。
「なんで…ここに…?」
「昼、ここで食うから。」
「…え?」
「あ、八木ー!」
「おお!こっちこっち」
振り向くと、いつも涼太と一緒に居るクラスメイト数名が寄ってくる。
端に移動した速水を見て、皆、怪訝そうな表情を向けた直後、八木と話し始めた。
「え!?こんな埃っぽい所で食うのかよー」
「いいじゃん。誰もいないし。」
「まあいいけどさあ」
笑い声の輪から外れた場所で、聡は足元に落とした弁当箱を取り、結局はその場を後にするしか方法が見出せなかった。
行き場が見つからず、休憩時間の半分を場所探しに要してしまった。
校内は何処も混み合っていたので、仕方無く聡は教室に戻る。
外を見ると、パラパラと小雨が降っていた。
今日は長谷部も居ないことだ。場所は改めて、明日探すことにした。
溜息を着き、落とした弁当を見る。
蓋が割れ、プラスチックの粉末が散り散りにオカズに付いてしまっていた。
(母さんに謝らないとな…)
仕方無く、そのまま封を閉めて鞄にしまう。
不意に、前に弁当を落とした時に成美から譲ってもらったパンの味を思い出した。
悔しさと寂しさで、居た堪れない思いが広がる。
机に突っ伏し、時間の経過を待つ。
今日の授業は5限目までだ。あと1限我慢すれば帰れるのだ。
携帯も壊れている今、時間を潰す策が思い浮かばなかった。
今日は成美は学校に居るのだろうか。
しばらく、昼は体育館裏に行かない事を伝えなければ。
もしかすると、体調が悪くて返信が出来なかったのかもしれない。
聡は不安で揺らぎながらも起き上がると、ゆっくりとした足取りで1組へ赴いた。
大勢の前で成美に話しかける勇気は無いが、先ずは会って話さない事には変わらない。
開いたままのドアから賑やかな声が聞こえた。
成美の席を把握していた聡は、そっと中を遠くから覗いた。
そこに、成美の姿は無かった。
(休み?…やっぱ…体調悪かったのか…)
不謹慎ながらに少しホッとし、携帯が直ったら連絡してみようと踵を返すと、後ろに居た人とぶつかった。
「あ、す、すみま…せ…」
聡は声を詰まらせた。
そこに居たのは、他でも無い成美だった。
成美と会って話さなければ。
そう考えていたのに、いざ顔を合わせると、何から伝えるべきかまとまらなかった。
お互いに視線を外せずに居ると、成美が1組に入ろうとする。
「か、神崎…!俺…お前と話したいことが…その…」
成美の足が止まったと思ったが、聡の言葉を聴くと、成美はそのまま教室に入ってしまった。
(なん…で…)
成美との友達関係も終わった、と呆然と立ち尽くした。
その脇で、クスクス笑い声が聞こえた。
視線を向けると、田島がこちらを見ていた。
このままここに佇む訳にも行かず、聡は重い足取りで教室へ戻ろうとした、その時。
--バシッ
「痛…ッ!?」
背中に痛みを感じ振り向くと、鞄を持った成美が立っていた。
「…帰るぞ」
「へ?」
「早く鞄。取って来い。」
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