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『叶多、その怪我どうした?何かあったのか?』
穏やかな優しい声はいつも自分を気遣って、その掌はいつも優しく頭や頬を撫でてくれた。
『ううん、何でも無い。ちょっと転んで擦りむいただけだから』
何度かあったやり取りで、
『人にやられた』
と言えていたら、何かが変わっていたのだろうか?
―――でも……言えなかった。
『お前みたいに取り柄の無い貧相なヤツが、どうして御園さんと一緒にいるんだよ』
『幼馴染みだからって、いい気になってんじゃねーよ』
調子になど乗っていないし、なるべく近くに居ないように気を使っていたのだけれど、そうすればそうするだけ御園は叶多を気遣って……。
『叶多だけだ。俺が心を許せるのは』
そんな風に言われたら、弱音なんて吐けなかった。
男らしく逞しい体躯に、整い過ぎた綺麗な顔。
クォーターの彼の瞳は色素が薄く澄んでいて、見詰められれば大抵の人は魅入られずにはいられなかった。
『ずっと俺の側にいろよ』
何度か言われたその言葉が、叶多にとっては宝物で。
御園の父の秘書をしていた父親の背を見ていたから、自分もいずれ御園にとって信頼出来る部下になりたいと心の底から思っていた。
だからこそ、尚更に……一人で解決出来ないからと泣き付くのは嫌だったのだ。
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