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ーーー僕は、逃げてばっかりだ。
そうするしか出来なかったと自分自身に言い訳をして、結局自分の意志を言う事も諦め切ってしまっていた。
ーーーでも……。
暴力は怖いし痛い。
それに抗がえる力も無いし、言った所で何も変わらないと嫌と言うほどに知っている。
だけど同時に、
『本当にそうなのか?』
と心の奥から声が聞こえて、自分の中に芽生えた矛盾に叶多は内心戸惑った。
「あ…うぅ」
『分かった。お前を信じる』
覚醒しかけた叶多の脳裏に、以前須賀の放った言葉が一際大きく木霊する。
言われた当時は何が何だか分からずに、信じる事も出来やしないから、思考そのものを放棄して、感情に蓋をしたけれど……。
「う……んぅっ」
「起きた?」
すぐ耳元で聞こえた声に叶多は身体を強ばらせ、反射的に逃れようと腕を前に伸ばすけど……腰へ回された腕に阻止されて身じろぐ事しか出来なかった。
「……ゆい?」
「もうちょっと寝てたら終わったのに」
「あっ」
表面を泡で満たした湯船へ一緒に入っているのだと……気付いた叶多が声を上げると、クスリと含み笑いを漏らした唯人が股間に触れてくる。
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