アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
好奇心
-
数日後。
暁は相変わらず山上達から苛めを受けていた。
特に、あの日に片山に動画を撮られて以来、たまに山上達の前で自慰を強いられるようになった。
とはいえ、実際に自分で行ったわけではないので、今でもーー怖いという面もあるのかもしれないがーー自分で処理をすることが出来ない。
そして、もう一つ変わったことがあった。
片山達に自慰行為を強制された日は、その日の夜に西城が暁の部屋に来て「いじめ」をする。
タオルで腕と足を同時に縛られたり、目隠しをされたりと様々なことをされてきた。
だが、いずれも西城の抱き方は優しかった。
暁も最近は慣れてきたのか、次の日に体が起き上がらないということは少なくなった。
とはいえ、暁を精神的に追いやっている事に変わりはなく、成績は学年3位まで落ちた。
葉月に相談しようと思ったものの、苛めの人に抱かれています、なんて口が裂けても言いたくない。
何より、葉月は性に関する話が大嫌いだった。
その話をされるとどうしても母親ーーだった人ーーが頭を過るらしく、その場から席を外してしまう。
そうして、ますます葉月に相談する勇気が遠退いていった。
しかし、地獄のような日々の中に少しだけ救いとなる事があった。
それは、西城が授業で分からなかった所を聞きにくる事だ。
いつもは何を考えているか分からない西城が、暁の言葉に耳を傾けて理解してくれる。
その反応が嬉しくて、暁にとって幸せな時間だった。
少なくとも、西城は山上達の仲間ではないような、そんな気がしていた。
では、何故いつも行動を共にしているのだろうか。
苛めに加担する気は無く、ただ見ているだけ。
でも、「いじめ」は西城一人で行っている。
西城は理由があって行動しているのか、それとも何も考えていないのか。
暁には何も分からなかった。
7月下旬。
暁は、高校最後の夏休みを寮で一人で過ごしていた。
お盆休みは葉月が迎えに来て、葉月の所で過ごす。
それまでは全く予定が無くて暇なのだが、暁にとっては至福の一時だった。
(片山君は実家に帰ってるし、苛められる心配は無いから平和だな…)
寮にいる生徒の何人かは、夏休みが終わるまで実家に帰る人もいる。
暁のように寮で過ごす者もいるが、お盆休みは寮の整備と掃除があり、閉寮してしまうので帰省をする。
今この寮にいるのは、暁と3~4人の生徒だけだった。
しかし、暁以外の生徒は1、2年の後輩で、部活に入っていない暁は話が出来る後輩を持っていなかった。
(そういえば、西城君も帰ってるんだっけ…どうして山上君達と一緒にいるのか聞きたかったんだけどなぁ…)
課題のその日のノルマを既に済まし、何もすることが無い暁は、枕を抱えてベッドの上をごろごろと転がり始めた。
行きすぎたあまり、ベッドから落ちて背中を打った。
「いたい…」
少し涙目になり、痛みをまぎらわすかのように枕をぎゅっと強く抱きしめた。
しかし、暁は床に倒れたまま起き上がろうとしなかった。
(なんだろう…いつもの夏休みなのに、何か物足りない気がする…)
ぼうっと何もない天井を見つめていると、何故か西城の顔が目の前に浮かんだ。
(あれ?なんで西城君が出てくるんだろう…)
目を閉じても開いても西城の顔がそこに浮かぶ。
表情が決して変わることのない無愛想な顔、それが一瞬だけでも変わるのは「いじめ」をしている時のこと。
二つの表情が交互に入れ替わり、暁は気がおかしくなりそうだった。
(そういえば、西城君の喜怒哀楽ってどんな顔なんだろう…もっと一緒にいれたら…)
そこまで考えた途端、暁はハッと夢から覚めたような顔をした。
「え…?今、僕、何を考えてたの…?」
呆然としたまま体を起こし、窓の外を見た。
外はセミがけたたましく鳴いていた。
「西城君にとっての僕ってなんだろう…それと、僕にとっての西城君ってなんだろう…」
友達でもないただのクラスメイト。
そのクラスメイトと過ごす、幸せな時間と苦痛の時間。
矛盾した一時を与えてくる人物ともっと一緒にいれたら、何があるというのだろうか。
幸か不幸、どちらに傾くのか。
そして、何故に自分はそれを気にするのか。
「…ただの好奇心かな。西城君って自分を出さない人だし、さっき僕がそう考えたのもただの好奇心だよね。他の人もそう思ってるのかな…?」
山上達以外で西城と関わっている人物は知らない。
もしいたら、その人に西城のことについて聞き出したいのだ。
この好奇心は自分だけなのか確かめる為に。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
9 / 18