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母親
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瞼の隙間に入ってくる眩しさに暁は目を覚ました。
目を開けると、カーテンの隙間から光が漏れ、ベッドに横たわっている暁の目に当たっていた。
(…あれ、何で僕寝てたんだっけ。お姉ちゃんと花火大会に行って…)
徐々に昨夜の情事を思いだし、暁は顔を真っ赤に染めた。
恥ずかしさのあまり布団を頭まで被った時、違和感に気づいた。
「あれ?僕、いつの間にパジャマに着替えたんだろう…」
暁は浴衣でも裸でもなく、黒の寝間着を纏っていた。
しかし暁には大きすぎるのか、手は裾で隠れていたりズボンが緩かったりと全体的にだぼだぼだった。
そこで暁は自分の寝間着ではないと気づく。
「僕のじゃないとなると…西城君の?」
すると突然ドアが開き、暁はビクッと体を跳ねた。
そこにはTシャツにジーパンだけのシンプルな格好をした西城が立っていた。
昨夜の怒りの表情は嘘のように、いつもの無表情だった。
「…飯」
それだけ言うと、西城は部屋から出ていってしまった。
いくつもの疑問を抱えたまま、暁はそっとベッドから降りた。
大きすぎる寝間着をズルズルと引きずりながら、部屋から出て朝食の匂いがする方へ向かった。
途中、ズボンが下がったり裾を踏んづけて転んだりして少し涙目になった。
リビングに着くと、机の上にはご飯と味噌汁、ベーコンエッグが置かれていた。
夕飯を取っていなかった暁は、盛大に腹の音を鳴らした。
「…座れば」
「うん…」
椅子を引いて席に着き、静かな朝食を取った。
あまりにも無音なその空間に暁は聞きたいことが聞けなくなり、変な緊張感が生まれた。
朝食を取った後、西城がTシャツと短めのズボンを暁に渡してきた。
「…送るから着替えろ」
それだけ言うと西城は部屋を出た。
未だに西城の読めない行動に頭を捻りながらも、暁はすぐに着替えた。
やっぱり全体的にだぼだぼだった。
着替え終えた暁は西城を探したが、家中のどこにもいなかった。
試しに外に出てみると、入口のすぐ横の壁に寄りかかって西城は待っていた。
「何で外に…?」
そう聞いても答えは返ってこなかった。
西城は暁が着替え終えたのを確認すると、少し距離を置いて再び暁の方を向いた。
出ろという意味らしい。
下駄を履いて暁は外に出た。
浴衣は西城が袋に入れて持っていた。
西城はドアの鍵を閉めると、さっさと先を歩いていってしまった。
急な行動に着いていけず、暁は慌てて後を追った。
知らない道がだんだん見慣れた風景になってきた頃、暁は前を歩いている西城に質問をした。
「あの、西城君。聞きたいことがたくさんあるんだけど…」
そう言った途端、西城は歩く速さを遅くした。
「…手短に」
暁の横に並ぶ形になると、西城は正面を見ながら言った。
「昨夜は泊まっちゃったわけだけど…お姉ちゃんはどうしたの?」
「…俺が連絡しといた。俺の家に泊まるって」
「え、お姉ちゃんの電話番号知ってるの?」
「…お前の携帯」
がさがさと浴衣の入っている袋から携帯を取りだし、着信履歴を暁に見せた。
着信履歴にこちらからはかけた覚えのない東野の電話番号があった。
「東野君の電話番号で思い出したんだけどさ…昨夜の電話の後、西城君ものすごく怒ってたよね?」
「………」
「西城君の怒った顔は初めて見たからびっくりしたよ…何であんなに怒ってたの?それに、あんなことまで…」
西城は正面を向いたまま答えようとしなかった。
諦めずに暁は食い下がった。
「昨夜の事だけじゃないよ。西城君はどうして山上君達と一緒にいるの?一緒に苛めるわけでもないし、二人きりだとあんなことするし…西城君は何を考えてるの?」
「…着いた」
ピタッと西城が歩くのを止めた。
いつの間にか、葉月の住むアパートの前にたどり着いていた。
「…じゃ、俺は帰るから」
「ま、待ってよ西城君」
慌てて西城の服の裾を掴むと、首だけこちらを向けた。
「…何」
「何って…まだ質問の答えを…」
「あれ?どっかで見たことのある顔だと思ったら、アンタ、もしかして暁?」
びくり、と暁は体を強ばらせた。
少しきつめの口調に後ろから迫ってくるヒールの音、そして煙草の臭い。
暁はそれらを持ち合わせている人物をよく知っていた。
長い間、それらに出会う事はなかったが、暁は一度たりとも忘れた事はなかった。
恐る恐る後ろを振り向いてその人物を確認する。
そこには、暁や葉月と似た顔をした女性が煙草を吸いながら立っていた。
「やっぱり暁じゃん。アタシの美貌を持っているだけあって、分かりやすいわね」
ニヤリ、と笑いながら女性は言った。
暁は怯えた表情のまま固まっていた。
「そんなに怯えなくてもよくない?アンタとアタシは親子なんだからさ。一応、ね」
皮肉な言葉を続けた女性は暁と葉月の母親だった。
暁や葉月に負けずかなりの美貌だが、肌の皺などを誤魔化す為か厚化粧をしていた。
母親は暁にカツカツとヒールを鳴らして近づき、暁の顎を掴んでむりやり顔を上げさせた。
「やっ…は、離して…」
「ほんっとに男のくせに綺麗な顔をしてるわね。生意気な小娘もそうだけど、男ウケするいい顔ね。血筋って怖いわねー」
笑いながら、しかし目は笑わずに鼻と鼻がくっつきそうなほど母親は顔を近づけてきた。
堪えきれずに暁は泣き出した。
「う…っく、やだ、やめて…お母さん…」
「泣くのはアンタの得意分野だったわねー昔から変わってないわ、ホント。泣けば姉が助けてくれるとでも思ってるの?半分しか血が繋がっていないクセに、本当の姉弟みたいに仲良くしちゃって…ばっかみたい」
ギリギリと暁の顎を強く握り締める。
暁は痛さに顔を歪めた。
「痛い、痛い…ごめんなさい、ごめんなさい…」
「泣いて謝れば許してもらえるとでも思ってる所が腹立つのよね。男でもその顔でなら何でもイケるなんて思ったら大間違いよ」
「思ってない、思ってないから…離して、痛いよ…」
「アンタって性別間違ってるわよね。いっそのこと、こんなの外して新しい世界に出てみれば?案外楽しい生活を送れるもよ」
嘲笑いながら母親はギュッと暁の自身を強く握った。
優しさのない刺激に暁は悲鳴をあげた。
「ひゃうっ!?いた、痛い!やら、とれひゃう、よぉ!」
あまりの痛さに暁は呂律が回らなかった。
母親は乱暴に暁の自身を扱っていたが、暁の表情を見ると驚いたような顔をして手を離した。
「アンタ、どこで覚えたの?その顔…」
「うぇ…なに、が…?」
「アンタの今の顔、欲情した顔してるわよ。それこそ男を誘ってる女の顔みたいに」
その言葉に、暁はサッと全身の血の気が引いた。
小さい頃に自分を襲った男の事を思い出したからだ。
母親は何かを察したようにニヤリと笑った。
「ふーん、アンタもとうとうそこまでイっちゃったのか。そういう顔は何度も経験しないと出来ないものよ。アタシはその顔でいくつもの男共を落としてきた。アンタって姉の方よりそっちの才能あるのね」
「ちが、違う…してない、女の人の顔なんて、してない…」
「してるわよ。なんなら鏡で見せてやろうか?」
母親が手鏡を取り出そうとすると、ガシッと誰かがその手を止めた。
手を辿ると、母親と暁の間に割って入るように西城が立っていた。
「あら、だぁれ?このお堅いイケメンさん」
「さいき、くん…」
「………」
西城は黙って母親の手を掴んでいた。
母親は観念したように暁の顎を掴んでいた手を離すと、西城も手を離した。
解放された暁は、全身の力が抜けてその場に座り込んだ。
「へーぇ、ずいぶんとイイ体つきねぇ。何か部活やってるのかしら?」
「………」
「あら、だんまり」
西城は母親の言葉を無視し、座っている暁を立ち上がらせた。
暁は安心したように、西城に体を預けると母親が薄気味悪い笑いを見せた。
「もしかしてその人?アンタを淫乱に仕立てあげた相手って」
ピクリ、と西城が暁の肩に置いた手を微かに力を込めた。
暁は生気のない目で母親から目を逸らした。
「あっははは!やっぱりアタシの子だわ!相手を虜にさせる美貌の持ち主。快楽の良さに気づいたのかしらね?アタシより遊び人、ていうかビッチ?」
ゲラゲラと笑いながら母親は吸っていた煙草を道端に捨てた。
暁はギュッと西城の服を掴み、西城の胸に顔を埋めると、じわっと西城の服が水で濡れた。
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