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飼い主の、好きな手。
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「ふーゆひっとさんっ」
うしろから、上機嫌な声がした。
「ん?」
と振り向くと、憂心の端正な顔がすぐ目の前。
驚いてうしろに下がろうとしたけどここはキッチンで、逃げ場はどこにもない。
向かい合わせで数秒目が合う。
少し笑ったかと思えば
「冬人さんの真似。」
そう言って憂心はオレを優しく抱きしめた。
「は!?」
「嫌ですか…?」
耳の横で囁かれる悲しそうな声。
「嫌じゃ、ないけど…」
これは本心、嫌じゃないよ、むしろ嬉しい。
オレの身体ごとすっぽりと収めてしまうほどの背の大きさ。
オレの頭が憂心の肩くらい。
丁度、憂心の胸の音が聴こえる位置。
耳を澄ますと、
どくんっどくんっ
少し早めな心臓の音が聴こえて、頭の中で反響する。
「料理の続き、もうしても大丈夫ですよ」
そう言うと力が少し抜けたので、まな板の方に向き直す。
だが腕がオレから離れない。
「憂心…?」
「はい」
「…手。」
「このまま、やってくれませんか」
「な、なんで…」
「指示も出しやすそうだし、ちゃんと近くで見ていられるからです」
「う…でも」
「嫌なら…離れますから」
「だから嫌じゃないって」
嫌じゃないから困ってるんだ。
「じゃあ、離れません」
頭の上で微笑んだのがわかった。
身体の前で組み直された憂心の腕は、少しまた力が強まって、料理が終わるまでずっと、オレを優しく抱きしめてくれていた。
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