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こっちを向いてよ
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「ん……っ、は……っ」
誰も居なくなった部室に、衣擦れの音が響く。
腰を高く抱え上げられた状態で後ろから突き上げられ、沸き起こる快感に思わず声を洩らしてしまいそうになるのを菅原孝支は必死に堪えていた。
「は……、ん、んん……ッ」
「菅原さん」
影山が腰をガッチリと抱いたまま身体を倒して背中にのしかかってくる。熱を孕んだ声で名を呼ばれ、ピクリと肩が震えた。
彼が言いたいことは大体わかっている。きっと次にくる言葉は”こっち向いて下さい”だ。
「な、なんだよ」
「こっち、向いて下さい」
「……ッ」
あまりにも予想どうり過ぎて、笑ってしまいそうになった。けれど気を緩めたらあられもない声を出してしまいそうで、菅原は小さく首を振った。
「や、だ……っ」
「どうしてっすか?」
「どうしてって……」
突き上げてくる合間に、切なげに訊ねられ言葉に詰まる。
初めて身体を合わせた日。後背位でしたいと言いだしたのは自分だった。
理由なんて単純なもので、感じてぐちゃぐちゃになってしまっているであろう自分のみっともない顔や、喘ぎ声を聞かされて影山が途中で萎えてしまうんじゃないかと不安だったからだ。
最初の方は影山も素直に意見を受け入れてくれていたものの、最近はしきりにこっちを向けと言ってくることが多くなった。
「俺、菅原さんの顔見ながらしたいッス」
「み、見なくていいっつーの! ぁん、……ふ、ぁっ」
「……そう、っすか……」
小さな溜息が耳元で響き、突然激しく打ち付けていた影山が動きを止めた。体重のかかっていた身体が自分から離れていく気配を感じ戸惑ってしまう。
まだ中にいる影山は熱く猛ったままの状態だし、何より今日はまだお互い一度も達していない。
もしかして――今日はもう終わり? もしかして怒った?
不安に思って身体を起こすと、タイミングよく腕ごと背後から抱きしめられた。あっ!と、思った時には既に遅く、そのまま再び激しく突き上げてくる。
「んっ、ふ……ぁあっ」
しっかりと拘束され逃げることも出来ずに突き上げられ、堪えきれない喘ぎが洩れる。
「や、ぁあっ、んんっ」
「菅原さん、ココ弱いっすよね」
「……ッ、んんっ」
腕を抱え込んだまま、影山の長い指先が胸元を撫でる。つんと尖ったソコを押したり潰したり指で弄られてゾクゾクするような甘い痺れが全身を駆けた。
「ほら、乳首摘むと俺の事をすっげー締め付けてくる」
「そんな事、いちいち言わなくていいって!」
自分の体の反応を解説されるなんて恥ずかしすぎる。執拗に胸元を弄られて下腹部がズクズクと疼く。早くイかせて欲しいのに今日の影山は意地悪だ。
不安定な姿勢に足がガクガクして、床に倒れ込みたかったけれど影山がそれを許してくれない。
「あっ、あっ……あっ」
唐突に耳の穴に舌を差し込まれた。濡れた音がくちゅくちゅと頭の中で響く。
「耳も弱いですよね」
「んんっ、も……やめっ、そんないっぺんにされたらオレ……」
耳と乳首を同時に責められ、思考がぐちゃぐちゃになっていく。
下からの突き上げと、胸と耳を一度に刺激されて声を堪えるどころの話ではない。
耳から腰まで駆け下りる強烈な痺れに翻弄され、目尻に涙が滲んだ。
「影山ぁ……も、ダメだってば……ぁ、ああっ」
一方的に追い上げられて一人で達するのだけは避けたかった。なのに全然愛撫の手を緩めてくれない。
「菅原さん、イっていいです」
耳元で濡れた声が囁き、中にいる影山の先端がイイ場所を擦る。片方の手で性器を握りこまれ中と同じリズムで扱かれて、菅原は背中を仰け反らせて影山の手の中に精を放った。
「菅原さん――……」
「えっ? ぅ、わ」
射精後の脱力した身体を繋がったままの状態で反転させられ、あっという間に床に押し倒された。
慌てて顔を隠そうとした手首を押さえ付け、真っ黒な双眸がジッと自分を見下ろしている。舐めるような視線にゾクゾクと身体が震えた。
恥ずかしい状態を影山に見られていると思うだけで、甘い疼きが沸き起こり放ったばかりだというのに体の芯が熱くなっていく。
「ばか、見るなよ、ッ」
「すみません。でも、やっぱり俺……」
頭上でゴクリと息を呑む音がして、腰を掴むと一気に突き上げてきた。
「ぁ……、や、ぁんっ、ん」
熱く滾った雄に内部を擦られ、敏感な部分を突かれる度に自分でもどうしようもない衝動が身体の中を駆け巡る。
無意識に背中を反らして逃げようとする身体を押さえ込まれ、激しい抽送を繰り返す。
「はぁっ、……ぁんっ、やっ、も……やだって、あぁ……っ」
影山が動くたびに繋がった部分からグチュグチュと凄い音がして、余計に快感が煽られた。
恥ずかしくて顔を隠したかったけれど、両手を押さえつけられているためにそれも叶わない。
「や、んんっ、は……ッくっあっ、あ!」
小刻みに激しく突き上げられてどうにかなってしまいそうだった。とにかく熱くて、何も考えられなくなっていく。
長い指が菅原のソレに絡みつく。前と後ろを同時に攻められ全身が溶けそうになるほどの快感に、円な瞳からポロポロと涙が溢れた。
「ぅあ、……影山ぁッ、こんなのオレ、へんになる……ッ!」
「大丈夫です。俺しか見てないんで」
「や、ぁあっ」
言葉でいくら嫌がってみても声はちっとも嫌がっておらず説得力は皆無に等しい。
影山もそれがわかっているのか、止めてくれる気配はなく激しく打ち付けてくる。
「は、ぁあっ、ん、激し、ぁあッダメ、こんなのオレ……ッ、も、出る……ッ!」
「菅原さん、一緒に……ッ」
一際奥を突き上げられ、目の前がチカチカするような強烈な快感を覚えた。身体を仰け反らせて吐精したのとほぼ同時に、自分の体内でドクリと影山が弾けるのを感じた。
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