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雪のよう。
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俺が少し神妙な面持ちで水音を見つめていると、水音が不意に泣きそうな顔になって言った。
「ボク、出て行かなきゃダメ? ボク…司さん…迷惑…ダメ?」
俺は内心驚きと焦りでいっぱいいっぱいになった。そして、無性に哀しくなった。
コイツはなんでこんなに人の気持ちに敏感なんだろう。それが元からなのか、それとも今までの生活の中で身についたものなのかは分からない。
俺は自然と首を横にふり、水音を抱き寄せていた。なんだかそうしないと、本当に春の朝焼けに降り積もった雪のように消えてしまいそうで。
さっきまで太陽を覆っていた雲が風で流れ、水音の背中を照らした。
水音は俺の胸の中で静かに泣いていた。
ーーーー
ーー
「水音」
水音がだいたい落ち着いたのを見計らい、俺は水音に声をかけた。
水音はその真っ赤な目を隠すためなのか単に恥ずかしかったのか、それとも気まずかったのか、返事をするかわりに俺の胸に頰をすり寄せた。
「水音には…ご両し」
「いない」
やっぱりな…
「…分かんない」
俺はまた口を閉ざし、茶を濁すように水音の髪をサラリと撫でた。
「ボク、会ったこと…ない。でも、大人の人なら…いつもいっしょ…だった」
「大人の人?」
「…うん。大人の人、監視員さんって言ってた」
「監視員?誰の?」
「………」
せっかく成り立った会話はそこでまた途切れた。俺がかける言葉を考えあぐねていると、今度は水音が口を開いた。
「ボク、いつも……出来るだけ、人に…会わないようにって」
「言われてたの?」
「うん」
「……つらかった?」
「ううん。……それより、ボク、この前、監視員さんたちが…ボク、いらないって。ぽいするって、おうち、入れてくれなくなった…」
そこまで言って、水音はまたグリグリと頰をこすりつけた。
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