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水音のいた場所
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「………」
俺は水音を抱く力を目一杯強めた。
コイツは母親も父親もいない中で今まで生きてきただけでなく、監視される生活を送ってきたということなのか。
正直、俺にはそれを水音がどう思っているのかはまるで想像がつかなかった。
でも、予測はできるような気がする。何より、人に接してこなかったということはおそらく人に甘えることはおろか、人に感情をぶつけたことさえないのではないか。
俺の考えがもし当たっていたのなら、水音はどんな思いで泣いているのか。それを想像するのはしごく容易なことだ。
ふと、俺の子供時代を思い出した。
俺も水音ほどではないとは思うが、孤独の子供時代を送っていた。
両親は共働きでなかなか会えず、学校に友達はいたが心からの友達と呼べる者は俺の記憶上には1人もいない。
みんな、俺の周りに群がっていただけで数少ない人を除いてだが、ほとんどは俺の気持ちなどまるで無視だった。
小中高すべてエスカレーター式の学校に通っていたため、学年が変わろうとずっとメンバーは同じ。
ほとんど具体的なことは覚えていないが、ひどく無力感を覚えたのは鮮明に覚えている。
だが、今ではそんなことなどちっぽけなことに思える。特に、水音の前では。
そんなことを思っていると、腕の中の小動物はゴソゴソと身じろぎをした。腕の力を緩めてやると、水音は俺の腕からすり抜けた。
そして、クルリと回って俺と向き合うような態勢をとると、水音は俺の手を遠慮がちにとりギューと握って見せた。
水音は笑っていた。
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