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あの夜。
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目を覚ますと、辺りはすっかり暗くなっていた。
ボクはあわてて起き上がってから、ーー途方にくれた。
ボク、どこに行けばいいの?
誰か、いないの?
ねぇ、答えてよ。
お腹、空いた。
何か頂戴?
ねぇ、聞いてる?
ねぇ、誰か、誰かーー。
あ。そうか。ボクにはもともと『誰か』なんて呼べる人はいないんだった。
じゃあ、なんで今、ボクは生きてるの?
頭に浮かんだのは、顔も分からない監視員たち。ただただ茫然と白衣を思い出した。
そうだ…。お水…。
だけど、まわりを見渡したところで、水などあるはずもなくて。
ゆっくりとベンチに座りなおし、改めて夜の公園を見つめた。
ボクはそこで初めて『途方にくれる』ということを知った。そして、噛みしめた。
『途方にくれる』ということはまわりに『誰か』がいたことが前提で感じることができる。
ボクにも『誰か』がいたのかな?
ふと考えてみたが、答えは上手く出てこなかった。まぁ、ボクはバカだからそんなに簡単に答えは見つけられないだろうな。
いつも国語は苦手だったし…。
ボクは何かをごまかすように真上を見上げた。奥歯のもっと奥でキシリと音がなった。
見上げた空には月も星もなくて、木の葉だけが真っ黒なゴムボールのような夜を縁取っていた。
どうしよう。
もうどうしようもない。
じゃあ、どうするの?
………。
その答えは返ってこない。
いっそ、あの家に戻ろうか。
いや、あの家に戻るにしても、まず戻り方が分からない。
………。
その時、ヒンヤリとした夜風が通り抜けていった。
そして、その名残のように頰から涙が零れ落ちた。
最初はそれが涙と理解できなくて、違和感の正体を探ろうと自分の頰に触れた。
冷たい。驚くほど冷たかった。
涙…。久しぶりに泣いた。
あの家にいる幼い頃の自分はずっと泣いていた。誰も泣いたってかまってくりゃしないのに、あきらめのつかないボクはしょっちゅう泣いていた。
今ではなぜ泣いていたかなんて思い出せない
けど、なんとなく今の涙とはちがう気がする。
涙は悲しいときに流れる。
悲しい?いや…………淋しい、だ。
何が?
分からない。
でも、『淋しい』。
また、頰に水滴が転がった。
でも、ボク、今は…。
そう思った途端、堰を切ったように空から大粒の水滴が降ってきた。
ボクは茫然として雨を避けるわけでもなく、空を見上げるでもなく、ただただバカみたいに座っていた。
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