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泣き上戸な凛太朗
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「突然失礼ですけど、今はどちらに?」
「えーと…自宅ですが…」
俺がまったく状況が飲み込めていないのを気づかってか、清水部長の口調はウワサよりも優しかった。
「あの、実は…ザッザザ…ちょっと、凛太朗君!?」
何の音なのか雑音が混じり、清水部長の声が遠くなった。俺はもうこの時点で事態をあらかた察していた。
「ウゥッうう…司しぇんぱいー」
「何やってんだ、お前は」
俺は凛太朗のグズグズの声にため息をついた。
これは酔ってるな…
凛太朗は頭よし、顔よし、性格よしの絵に描いたようなモテ男だが、酒にだけはとことん弱いのだ。
そして、酒に酔うとすぐ泣く、泣き上戸でもある。とにかくどうしてか酔うとこちらがビックリするほどネガティヴになる。
「はぁ…凛太朗、どうした?」
「ううぅ…グスッ…司先輩ィ…ウゥッ」
こりゃ話にならない。
すると、ふたたび雑音が入り、相手が変わったことを告げた。
「お電話かわりました、清水です。あの、今日営業部のコたちと凛太朗君たちで飲み会をしてたんだけど、凛太朗君が突然泣き出して…」
手に負えないから俺に電話してきたってことか…。
おおかたうちの部内の誰かが俺の名前を出したんだろう。
その時チョンチョンと服を引っ張られた。
ふと下を見やると水音が俺の足にまとわりついていた。俺をキョトンと見つめている。
「グハッ…かわいい…!」
「え?」
「あ、いえ、なんでもないです!えと、今どちらにいらっしゃるんですか?」
「た、助かるわ! 場所は駅前のカメナシよ。分かる?」
「えぇ、大丈夫です」
「じゃあ悪いけどよろしくね」
その言葉を最後に電話は切れた。
「フゥ〜」
いろんな意味でため息をつきながらそのまま水音と視線を合わせるようにしゃがんだ。
「水音。俺、ちょっと用事ができちゃったんだよ。できるだけ早くには帰ってくるから、今日は先に寝ててくれるか?」
「………」
水音は黙り込んでしまった。でも、あまり清水部長を待たせるわけにはいかないのもまた事実で。
俺は重たい腰を上げ、元気のなくなった水音をせっついて真夜中に家を出た。
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