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過去編 side司
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「おはよー」
「はよー! ねぇ、今日の現文の宿題やった?」
「あははー、やってるわけないじゃん!」
「だよねー」
「うわ、ひど!」
「自分で言ったんじゃん」
いつもどおりの、騒がしい教室。
俺、音無 司は、いつもどおり、足を踏み入れる。
とたんに俺の周りには、身なりのハデな女子や男子が我先にと群がる。
「おはよう、司くん! 」
「おはよー!」
「あぁ、おはよ」
「ウッス、音無!今日もキラキラしてるぅ〜」
「ちょっと何よ。あんた最近、司くんにからんでばっかでさー」
うるさい。
「そうよ、そうよー。山口、いくら羨ましいからってさぁ?」
黙れ。
「ちょ、ヒドイってww
なぁ音無ー、お前も黙ってないでなんか言えよー」
もうクセになったニコリ、と笑顔を貼り付ける。
そのままおしゃべりを続ける3人の間を割るようにして、黙って席に着く。
すると、また他の男子がまだ登校していない生徒の席に座って俺に話しかけてきた。
「おはよー、音無!」
「ん、おはよう」
ニコリ。
「おー!な、昨日のさ、テスト。
お前、また満点だったろ?教えてくれよ」
「あ、あたしもあたしも!」
「司くん、サキもいい〜?」
面倒くさい。
「え、マジで? やった!司くんって頭いいし、分かりやすいんだもん!」
「だよねー!サキもそう思う!」
うるせーよ。
「おいおい、俺の司くんをとんなよ!」
「別にあんたのじゃないでしょ〜」
誰のモンでもねぇよ。
「え、何してんの、お前ら」
「あれ、山口じゃん。あんた、見かけによらず頭よかったわよね?」
「別に教わる必要ないじゃん?」
そこで俺は初めて口を開く。
「どこ? 吉田…」
すると、周りがかすかに色づくのを感じる。
最初に俺に教えてほしいといった男子が、話すのを止め、あわてたようにテストの回答用紙を広げた。
教科は数学。
「こ、ここ!」
「ここは…ここを一度分解してから…こっちに代入して…グラフ書いて最大値を求めるの」
「お、おー…スゲェ」
男子生徒は緊張しているような、スッキリしたような声色で感嘆の声をあげた。
「分かった…?」
微妙な反応に不安な俺は、小首を傾げながら男子生徒を見つめた。
騒がしかった教室は、いつのまにか静まり返って、俺たちを見つめてヒソヒソと話していたり、ただただポカンとしているヤツもいた。
この瞬間が一番怖い。嫌いだ。
だから話しかけてほしくなかった。
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