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161.✩悪いこと
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✩✩✩✩
桜さんに寝癖を直してもらってリビングに戻ってきた。すっかり温まったリビングで手紙の続きを書き始める。桜さんはソファーに寝そべって俺の髪をいじったりテレビを見たりと相変わらず自由だ。
「ねえアサくん。ずっと思ってたんだけど、何を書いてるの?」
「俺の両親に手紙書いてるんです。俺、自分の親のことなんにも知らないから……」
「アサくん……!」
「あ、楓さんから聞いたんですけど、桜さんは俺の両親と仲いいって……。俺の親のこと、教えてもらえませんか?」
「うんうん、全然いいよ!私の知ってることは全部教えるよ!」
桜さんがソファーから下りてぎゅーっと横から抱きついてきた。初めて会った時と同じやわらかい香水の匂いと、キッチンの方から香ばしいいい匂いがした。
桜さんの横抱きを気にしないようにしながら両親のことを聞こうとすると、ぞくっと背筋に悪寒が走った。振り向けばフライ返し片手に無表情で俺たちを見下ろす楓さんが…………。
「何してんの?」
「楓~!聞いてよ、アサくんがおばさんたちに手紙書いてるんだって~!もう本当に健気ね……!」
「それを聞いてんじゃねえよ。桜姉は旭に何してんだって聞いてんの」
「んー?おばさんたちの話をしようとし………ハイ、ごめんなさい……離れます……」
楓さんの威圧感に負けた桜さんはすごすごと俺から離れてダイニングへ行った。楓さんの言葉遣いが今までにないくらい荒くなってる……!とよく分からない感動を覚えていると、パタンとダイニングへ続くドアが閉まるのを見届けた楓さんが、冷気を放ちながら俺を見てきた。
絶対逸らしちゃいけないと思って楓さんの目を見つめ返していたけど、先に逸らしたのは俺ではなく楓さんだった。
「か、楓さん……その、ごめんなさい……」
「何が悪いか分かって謝ってるの?」
「……楓さんは朝ごはんの準備してるのに、桜さんと朝から……い、イチャイチャしてるように見えることを、してました………」
「そうだね、その通りだ。自覚してるじゃん」
楓さんは俺に視線を移してしばらく考える仕草をしていたけど、結局それ以上何も言わずにダイニングへと戻って行った。
リビングに一人残された俺は一気に脱力して、ラグの上に畳んでおいたブランケットを手繰り寄せた。さっきの楓さんの冷気はやばかった……。心にグサグサくる。
………楓さんを怒らせちゃいけないな、としみじみ実感した。
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