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第3章、「同性という事」
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龍希は、けんちゃんに全てを話した。
貴仁に想いを伝えて来た事。
そのまま出てきてしまった事。
あの雨の日に見た女性の事。
…女性の事に関しては、
あなたバカじゃないの?考えすぎよ。それ。
と、呆れられた。
そして仕事にまで影響が出てしまった事。
「…仕事に出ちゃうなんて、ちょっと珍しいわね」
女性の事では散々バカにされたが、
仕事のミスは少しだけ、彼なりに慰めてくれているようだった。
そして、
まぁ、2、3日くらい泊まっていいから、
ゆっくり頭の中、整理しなさいよ。
と、滞在を許してくれたのだった。
………それから半月は経つだろうか?
「……で、龍ちゃん、いつまでここに居るつもりよ。」
「…なんだよぉ、それ!オレ居るの嫌なのかよ。」
少しムッとして答える龍希と、
呆れ顔で夕飯をテーブルに並べるけんちゃん。
龍希への突き放すような言葉とは裏腹に、そこには、しっかりと、龍希の分のサラダが綺麗に盛られていた。
「あのねぇ、嫌とかじゃなくて!龍ちゃんの為に良くないって話よ。解らない子ねぇ、ホント。」
変わらず言葉では怒っているが、
その手はサラダに手作りのドレッシングをかけてやり、
言われてもいないのに、お茶かお酒かを訪ねると、グラスにそれを注いで差し出している。
こういう人なのだ。
そんな山のような気配りの中、
龍希はと言えば、全ての気配りに礼を呟きつつも、ふてくされた顔のまま、頼んだお茶を流し込み
口いっぱいにサラダを頬張りながら、けんちゃん特製の夏野菜カレーにも手を伸ばした。
「落ち着いて食べなさいよ…子供じゃないんだから」
ガツガツと、頬張ったサラダも飲み込まないうちから、カレーをさらに頬張る龍希を見て、
けんちゃんは溜め息をついた。
「うおー!カレー旨いー!めっちゃ旨いーー!!」
そんな忠告は聞く由もなく、龍希は口の中いっぱいにものを頬張り嬉しそうに料理の味を褒め称えた。
以前、けんちゃんの紹介をした時にも告げたと思うが、
まるで親子のようである。
龍希にとって、けんちゃんは初めてのセクシャルマイノリティ(セクマイ)な友人で、
親友で、親子のようで、長い付き合いなのもあり、
今、けんちゃんが何故ここに居座る事が自分の為にならないと言っているかなど、無論、理解していた。
解っていたが、触れたくなくて、解らないフリをした。
すると、それすらも察しているのか、けんちゃんは
龍希へのカレーのおかわりをよそいながら告げた
「本当はわかってんでしょ?自分に嘘ついてでも、貴仁さんの所に戻った方が、離れてるよりマシかもって。」
目の前に置かれた、2杯目のカレーを見つめながら、龍希はボソッと呟く。
「……わっかんねぇもん。」
……嘘だ。自分は解っている。
龍希は呟くと同時にそう思っていた。
けんちゃんの言う通り、また全て終わりにしたフリをして、「やっぱり貴方の事は、諦めました!」
なんて言いながら笑って戻ったならば、貴仁の事だから、何もなかったように接してくれる。
変わらず、幼なじみのように、兄弟のように、友人のように……。
そんなのは、もうとっくに解っている。
「………べつにいいけど、何もかもを諦めたように生きる癖、直しなさいよね。」
けんちゃんが、自分のカレーを食べ終わると、立ち上がりながら、言い、
そして。すぐに付け足した。
「…それから、本当にギリギリまで我慢する癖もね。」
そしたら、自ずと今のベストが見えてくるんじゃないのぉ?
さらに付け加えられた台詞が、台所の方から声だけになって聞こえくる。
全てが図星すぎる台詞に、龍希は再びボソリと呟いた。
「……わかってんよ。」
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