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居酒屋で 2
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「改めまして、乾杯ー!」
声の威勢の割にグラス2つがぶつかった音は上品だった。
目の前にいる人は、上機嫌な様子で、鞄から冊子を取り出してテーブルに並べられたツマミを口に運びつつ、器用にページを開いていく。
慌てて自分も、雪弥さんが持っているものと同じ冊子を鞄から取り出す。
「俺、雪弥さんと共演楽しみなんです!」
「本当に?ありがとう。僕も楽しみだなぁ」
取り出した冊子は、いわゆる舞台の台本だ。
今、目の前にいる人は、雪弥さん。
今度の舞台で初共演になるのだけど、演じる役どころの絡みが多かったので、こうやって、個人的に打ち合わせを兼ねて交流会を開いて貰うことにした。
顔合わせの時から、台本が届いたら一緒に練習をしようと約束していた。
だから、一昨日手元に届いてからすぐに連絡を入れて、無理を言って日程を合わせて貰ったのだ。
俺はまだまだ駆け出しだから、事務所は違えど役者としての先輩である雪弥さんとこうやって話せるだけでも物凄く勉強になる。
雪弥さんは、物腰が穏やかな人で、いつもニコニコと笑顔を絶やさない。
いわゆる癒し系だ。
でも、芝居の世界ではしっかりと芯を持っていて全くの別人のように感じてしまう。
僕はそんな彼の芝居に魅せられてしまってから、もう2年近く経っていた。
そして、とうとう憧れの人との共演。しかも絡みの多い役どころだったのは、本当に幸運だと思えた。
「雪弥さん」
「んー?」
「ここのとこなんですけど、ここって…」
「あー、ここか。ここは、僕としては…」
不意に近寄って話すと、いい匂いがした。
あー。
狡いなぁ、この人。
こんなにカッコいいのに、性格は柔らかくて、いい匂いまでするなんて。
まさに綺麗な人だ。
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