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矛盾する時 1
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「…と、もう着いちゃったね、事務所。もうちょっと話したかったのに」
「都会だと二駅分って意外と近くですもんね」
「本当は、真都くんの用事が終わるのを待って一緒にご飯…って言いたいんだけど、昨日飲みすぎたばっかりだからね、今日は大人しく帰るよ」
雪弥さんは、力なく苦笑いしてみせる。
二日酔い、まだ少し残ってるのかな。
本当は行かないで欲しい。
すぐ、終わらせるから待ってて下さい!って言いたい。
会ってしまうと欲が深くなる。
でもこれ以上いたら、きっと自分の気持ちを抑えられない。
「あの、偶然でも会えて良かったです!なんか元気な姿見てほっとしました…」
素直な気持ちだった。
けれど、素直過ぎて。
言葉にした後で、今朝雪弥さんを避けて帰った自分の行動に矛盾を感じる。
その事実で、後ろめたい気持ちにもなった。
自分の感情と考えが、全くうまく噛み合ってない。
好き、だけど、会いたくない。
会いたい、けど、会ってはいけない。
声を聞きたい。
笑顔を見たい。
でも、それを言葉には出来ない。
どうしようもないもどかしさだった。
「ありがと、真都くんはいい子だね」
いつもどおりの柔らかな笑顔を向けられて、それを正面から受け止めきれなかった。
わずかに目を逸らして、下を向いて、普通ですよ…と消え入りそうな声で返事をした。
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