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「いっ、いらっしゃいませ」
か細く、小さな声。
重量感のある前髪からのぞく目は、俺をチラと見上げる。
しかし、ほんの一瞬のこと。すぐに伏せられてしまう。
そんな彼女を見つめ続けるわけにはいかず、俺も思わず視線をそらしてしまった。
五千円札をレジに置き、壁に貼られている新刊案内を興味もないのに眺めてしまう。
「……かっ、カバーはお掛けしますか?」
「お願いします」
「はいっ!」
今度は肩に力の入りすぎている。よほど緊張しているのだろう。
その証拠に、本をそのまま袋へ入れようとする。
「あの、カバーは……?」
「ハァッ! ごっ、ごめんなさいっ!」
返事だけはちゃんとしていたが、どうにもボケているらしい。よほど心に余裕が無いのだろう。
彼女はぺこぺこしながら慌てて本にカバーをかけ始める。
ただでさえ赤かった頬がさらに赤みを帯びていく。
尾津はこの娘のどこを気に入っているというのか。
“見てて飽きない”という意味だとしたら、あいつは相当、性根が腐っている。
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