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「さてさて」
プロフェッショナルは座り込んだ途端、肩の力を抜き、ふっと表情をほころばせる。
「いやぁ、思い出すわ。昔もこうやってメシ作ってさ。二人で食べたよなあ」
父さんは長く単身赴任。母さんも仕事の関係上、一度家を空けるとなかなか帰ってこない人だった。
だから、月の三分の一くらいは兄と二人での食事だったと思う。
「片付け、は……、俺が、やった……」
「そうそう」
俺が中学の部活で忙しくなった後もずっと変わらずそうしていた。
思えば、兄だって専門学校等でずっと忙しくしていただろうに、きちんと料理をしていたのだから感心してしまう。
「懐かしいな」
俺の心をあたたかくしてくれていたのは、母さんだけでなく、兄の力でもあったのだ。
「……兄、さん」
「ん?」
「ありがとう」
感謝の言葉は自然にこぼれた。
「なんだよ、急に」
普段は悪態ばかりついている弟が突然そんなことを言い出したものだから、照れたのだろう。兄は頭のうしろを掻き、「はははっ」と、わざとらしく笑う。
「ホントにカゼ引いてんだな!」
早く治せよ、と、額を軽く叩かれた。
――ごめんなさい。
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