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(179頁)▼暴力有り
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「……た、くみ、……兄、さ、……」
片目だけで見上げ、何度もその名を呼んだ。
幼い頃から大好きだった兄のこんな姿、もう見ていたくなかった。
やめてほしかった。
手を止めてほしかった。
こうなったのは、他でもない、俺のせいなのに――。
兄さんはケティにだけ罰を下す。
「……も、う、やめて、く……」
次第にその拳の勢いが弱まり、狙いが狂っていったのは、言葉が届いたからではない。
兄の手も傷つき、血がにじみ始めていた。頬や鼻の骨を何度も打ち続けたそこは、赤紫色に腫れ上がっている。
「……ぐっ」
最後の一発は、ケティの顎をかすめ、床を擦っただけだった。
兄は途端に力を失い、彼の胸の上に突っ伏してしまう。
「――もう、気は済んだ?」
やがて訪れるはずだった静寂は、気だるい声に打ち破られる。
「まったく……、こういうことだけはするのね」
その顔面は鼻や口から流れる血で赤黒かった。
「バカみたい」
彼は馬乗りのままの兄を乱雑に押しのけ、腕で血を拭った。
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