アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
新しい職場 2
-
「じゃあ、各営業担当ごとに、一番売り上げの高い顧客とその周辺で近い顧客2件くらいピックアップしてくれる?3ヶ月くらいかかると思うけど、スケジュール組んで、順次一緒に挨拶回りさせて欲しいんだ」
「わかりました、リストアップしておきます」
営業二課の仕事はいわゆる外商だ。
デパート店内ではなく、外に営業に出向いて注文をとってくる形だ。
顧客はデパートと多額取引をしてくれる外商カードを所持している人たち。
うちのデパートでは、年間100万円以上の購入があった上で、希望があった顧客に外商カードを発行している。
年間1000万以上の購入があると、営業一課の担当になるが、それ以下の顧客は営業二課が担当する。
つまり、僕の部署である営業二課は、年間数百万の売り上げの顧客が営業の対象だ。
頭数は多いけれど、やはり一課の売り上げを越えることは難しく、営業二課の目標はいつだって営業一課越えになる。
顧客数を増やすことも重要だけど、増やしすぎても営業が回りきれない。
だから、一人の客単価を少しでもあげるのが、一番手っ取り早い。
手っ取り早いけれど、その方法は決して簡単ではない。
僕は顧客情報リストとそれに応じた過去の買い物履歴を参照しながら、一つ一つを頭に叩き込んでいく。
「お、松山じゃん。こっちに来るって聞いてたけど、今日からだったのか」
よく通る声がフロア内に響く。
同時に沸き起こる嫌な予感。
無視するわけにもいかず、書類から目を離し、声のする方向に顔をあげる。
あぁ。
やっぱり。
…三枝の姿がそこにはあった。
目が合うと、三枝は他には視線も向けず、まっすぐ僕の席に向かってくる。
「久しぶり」
「そう、ですね。お元気そうで何よりです」
僕は精一杯の営業用の笑顔と口調で返事をした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
10 / 36