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三枝侑史 1
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急に僕に話しかけて来た三枝に周囲の社員は「どうしたことか?」と不思議そうに眺めていた。
そんな社員達に、三枝は「こいつ俺の同期なんだよ、大学から一緒なんだ」と言い出す。
実に雑な説明だけど、社員達は納得したのか、それぞれの業務に戻っていく。
その様子を確認してから、三枝は僕の方に向き直る。
「相変わらず小柄だな。ちゃんと食ってんのか?」
「僕は普通ですよ。三枝さんが大きいんです。全く羨ましい限りです」
僕を見下ろす三枝に、笑顔を崩さず対応する。
三枝の身長は日本人の平均を大きく超えている。
185以上あるだろう。
スーツ姿が威圧的で、切れ長な目元に端正な作りの顔立ちは迫力がある。
マフィアの類だと言われたら信じてしまいそうだ。
「今日から赴任?」
「えぇ。でも、まだ引越し作業が完了してないので、明日はお休みを頂ける予定です。これから色々教えてくださいね」
「任せとけ、そうだ。早速、歓迎会してやるよ」
「・・・え?」
急な三枝の提案に僕は一瞬貼り付けていた笑顔を崩しそうになる。
「今日、仕事終わったら、飲みに行こうぜ、明日休みなら丁度いい。予定なんてないだろ?」
「そんな、急に言われても・・・」
僕が言葉を濁すのも、お構いなしといった様子で、三枝は話を続ける。
「どうせ来たばっかりで右も左もわかんないんだろー?俺、地元からこっちだし、色々詳しいからさ。営業に使える店も知ってるし、名古屋支店のことも教えてやれると思うよ?」
「・・・そういう、ことでしたら」
断る理由もない。
確かに三枝の言うとおり、土地勘のないこの場所で営業としてやっていくなら、付近の店の情報は出来るだけ知っておいた方がいいに決まっている。
名古屋支店の情報も、表向きな部分しか知らないのは事実だ。
三枝とも、今後の仕事をスムーズに進める事を考えたら邪険には出来ない…。
何より社交辞令だったとはいえ、色々教えて欲しいと言ってしまったのは自分だ。
「よっしゃ、じゃあ西側通用口に7時半な」
「わかりました。僕、お酒はそんなに強くないので、お手柔らかにお願いしますね」
僕はそう言って、三枝を送り出し、再度、顧客情報に目を通しはじめた。
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