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誤解1
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「そんな事言って、可愛い顔されたらリクエストに答えたい所だけど、愁さっきお腹すいたって言っただろう?それより欲しいが先か?」
少し照れたように言われて、こっちが恥ずかしくなった。
自分の勝手に盛った発言に顔が火照る。
「べ、別に可愛くなんてっ」
反論しようとした瞬間、玄関のインターホンが鳴った。
ピーンポーン、ピーンポーン
「お、きたか。ちょっと待ってろ。」
優也さんは僕の上から体を起こしてリビングの方に向かって行く。
誰か来たのだろうか?
誰か…
ちょ、ちょっと待って。
僕、裸で、着ていた服はみんなびしょ濡れなはずで…
あたふたしていると知らない人との会話が飛び込んできた。
「何の用だ。」
「やだなぁ、優也の秘書が下にいたから荷物預かってきてあげたんだよー。あれ、誰かきてるの」
底抜けに明るい声。
会社の人、友達、家族?
どうしよう。こんなとこに裸の男がいたらマズイんじゃ…
優也さんって社長って言ってなかったっけ?
社会的にばれたら色々面倒なんじゃないの。
とりあえずクローゼットっぽい所の1番上に乗っていた赤いTシャツを頭から被る。
きょろきょろと見回してジャージっぽいパンツを手に取った。が、下着はさすがに借りられない。
よなぁ。
足音がこっちの部屋に近付いてくる。
「そんな事より今日泊めてよ。久しぶりにさぁ」
「待てって。そっちはー」
慌ててジャージを履く。直にはりつくのがくすぐったいし、Tシャツが大きすぎてワンピースみたいだけど仕方がない。
ベッドから滑り降りて絨毯に座った所で部屋の扉が開いた。
セーフ…
「いいじゃん。だいたい昨日のメール何?意味わかんな…」
開け放たれた扉から、迫力のある美人が現れた。
聞こえていた声は男の人だったと思うけど…
真っ白い肌、ゆるやかにウェーブがかかった茶色の髪は顔を縁取るように流れている。
赤い唇、大きな瞳に長い睫毛。化粧でもしているかのようにパーツの整った顔。
明るい色のスーツにピンク色のシャツ。日本人離れした長い足。腰の位置の高さが半端ない。
僕が床から眺めているから、だけじゃないと思う。
後ろから慌てて優也さんが飛びこんできて僕を背中に隠すように視界を遮る。
「待てって言っただろう。」
うんざりしたような声を出す優也さん。
「誰なの?」
さっきより、低くなった声音と怒気にビクリと体が震える。
これって、もしかして彼女だったり?
何て説明したら…
やっぱり、さっきの”好き”は冗談だったって事か。
_わかってた癖に_
そう。最初からわかっていたつもり。だったのに落胆したような変な気分。
背中に隠されているせいで2人の表情は見えないけど不穏な空気は僕にもわかる。
「それ、優也のシャツだよね。どういう事かなぁ。」
勝手に着たのがまずかったのか、裸でいた方がよかったのか、既に自分では判断できない。
冷たい視線が降り注いでいるのが恐くて血の気が引く。
「アヤ、やめろ。」
うんざりしたまま怒ったような声を出した優也さんの顔を見て驚いたような顔をした迫力美人は態度を豹変させ、しゃがみこんで僕の方に近付いてきた。妖艶な微笑みを浮かべながら。
本当に妖艶って言葉がぴったりな人。
「初めまして。僕、鳴海綾人。君は?」
僕って…男の人。なんだよね?
もしかして、これは修羅場ってやつ?
愛人のところに本妻が乗り込んでくる。みたいな。
優也さんもこの人も、もちろん僕も男だけど。
堂々としてていいものなのか。
目線をあわせるかのようにしゃがみこんで答えを促されている事に気付いて仕方なく声をだす。
「…南野愁といいます。あの、お邪魔してます。」
こんな挨拶、無駄だと思うんだけど。
表面だけそんな優しい顔をしても何も変わらない。
怒りをたたえた目線。それは昔から自分によく向けられていたものによく似ている。
心底、邪魔だと思っているんだろう。空気がチリチリして今にも髪が逆立ちそう。
「ここはお前の家じゃないし、俺はお前を呼んでない。誰がいようと関係ないだろう。」
さっきまでの優也さんからは想像もつかないくらい冷たい声で冷静に言い放つ。
それにもめげずにアヤさんの視線は僕に注がれてる。こっちが焦るくらい情熱的に。
「あの、て、手違いで水を被ってしまって着替えを借りたんです。」
自分でも可笑しいくらいの嘘。
それを聞いてまたニッコリと笑うと
「だめだよー。君みたいにかわいいコが獣と2人っきりだなんて。食べられちゃっても文句言えないよー。あれ。その首どうしたの?」
ギクリとして咄嗟に首の痣がついているだろう場所に手をやる。
「あ、ぶつけてしまってー」
目を細められた事で、失敗に気付く。
こんなとこ誰もぶつけないって…
「へぇー、随分派手にぶつかったんだね。よく見せてよ。あれ、それって歯型みたいだね。どこか他にもぶつかってないか見て上げるよ。」
と手を延ばしてきた。
喉から、ひぃっ。て音がして後ずさった。
他人が近付いてくる恐怖に体がすくむ。
何これ。こわい。綺麗すぎる顔が余計な恐怖を与えてくる。
さっきまでだって他人といて、あんな凄いことしても平気だったのに。
「いい加減にしろ。こいつに触るな。」
腕を掴まれて膝立の体制で間に入った優也さんに勢いよく抱きすくめられる。
空気が凍る…
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