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記憶_3
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瓶を握りしめた感触で我に返って頭を振る。
今、何考えた?
魔が差した、とは良く言ったものだ。
瓶から手を離して、彼女の肩に触れる。
ぴくりと眉を動かして、僕を眺めるその表情から意志は感じられなかった。
みるみる間に涙がたまり、瞳の渕から零れ落ちるのをぼんやりと眺めていると、確かに僕は彼女によく似ているのがわかる。
「ごめ、なさ…ごめん…しゅう…ちゃ…」
泣き崩れる彼女はまたいつものように正気を手放したんだろう。
痛いよう。と子供の様にぐずり出す。
それを見ながら、さっきと反対のポケットから1日分の薬を取り出して渡す。
勿論、量は減らしてある。
だからと言って安全な薬だとは思えないけど。
痛み止め?それとも精神安定剤、のような物?
小さなプラスチック容器に入れられた数十粒の薬。
成分も効能も名前もわからない何か…
これを一日で飲みきってしまうほど依存している体。
健康ではないだろうけど彼らは医師免許を持ち、病院を経営しているのだ。
命に関しては、僕よりずっと知識があるだろう…
逃げる事を考えなかった訳じゃない。
でも無駄だと思った。
この中に入ってしまえば内側の鍵を持っていない限り外には出られない。
その鍵を僕は持っていない。その上あの足だ。
どのみち彼女は逃げられない。
きっとどこまでも追いかけられて連れ戻されるだろう。
自宅で客をとらせている。そんな噂がたてばあっという間に広がるだろう。
そんな生き証人をアッサリ解放する筈がない。
閉鎖的な田舎街で暮らす一族にとって世間体を保つ事は重要だ。
逃げられない、体も自由にならない、記憶も曖昧で意識も…
殺して欲しいと口走るのもわかる気がする。
それでも生きていてくれないと困る。
夏彦達がどう考えているのかわからない。
でも僕にとっては彼女がいる。という理由があるから耐えていられるのだ。
自分の為だけならとっくに逃げ出していただろう。
この地獄のような檻の中で
僕はヒーローにでもなったような気になっていた。
ガチャン、と外の扉が開く。
それまでは…
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