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休日_2
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奏介さんが爽やかに登場して朝ご飯にありついている訳なんだけど…
「何でそう毎日現れるんだ。こんな頻繁にウチに寄った事なんてこれまでなかっただろ。」
仏頂面を向ける優也。
「今日はサンドイッチにしたよー。何が好みかなぁ。タマゴ?チーズ?ハンバーグ?トマト?」
テーブルに広げられたパン達。
続いて取り出されるジュースの山。
「おい、無視かよ」
「うん。愁くん甘いのはどう?あんこも生クリームもあるよ。」
ニコニコと差し出されて自然とこちらも笑顔になってしまう。
「生クリーム、大好きです。」
そう言うと、奏介さんの表情が更に明るくなった。
「俺も。つい食べ過ぎて後悔するんだよね。半分こしようか。」
「あ、はい。嬉しいです。」
言いながら、ふくれっ面なままの優也の口元にタマゴサンドを近付ける。
「はい。タマゴ。好きですよね?」
「…ちっ、食ってやるよ」
僕の腕をとって大きな口を開ける。
「あれ、大きな赤ちゃんだね。俺がやってあげようか?」
「ばかっ、余計な事すんな。ほら愁、早くしろ」
急かされて、あたふたと口に運ぶと指まで舐められた。
「ちょっ、優也さんっ」
「いいだろ。減るもんじゃないんだから。」
恥ずかしくて顔が熱くなってきた。
チラッと奏介さんを見ると、満面の笑みで見守られていて一層恥ずかしくなる。
「実は少し話があって…」
と笑顔のまま言いにくそうに奏介さんが続ける。
「昨夜、愁くんのマンションで火事があってね。残りの荷物と部屋の状況をできるだけ早めに見に来てもらいたいと管理人から連絡があったんだ。」
…火事…?
部屋の状況を見る?
「まさか…」
そんなはずはないと思いながら奏介さんの言葉を待つ。
「そう。火元は愁くんの部屋なんだ。ただ、無理して行く必要はないよ。解約を今月末まで延ばしてもらって残っている荷物は処分する予定だと連絡を入れてあるから。本当に全て処分してしまってよければこっちで手続きを進めようと考えているんだ。ひとまず伝えておかないと、と思ってね。」
誰もいない火の気のない部屋からの出火…
誰かが手を加えなければそんな事あるはずがない。
…放火…?
一体誰が…
アノヒトが?それとも他の…
「そうか。現場検証なんかもあるだろうからな。」
知らない間に解約されてしまった部屋。
特に何も持たずに引っ越してしまったけど、まだ僕の部屋。
手続きだって本人がした方が簡単だろうし奏介さんだって忙しいはずだ。
正式に仕事を始める前からそんなに迷惑はかけられない。
「行き、ます。火災保険はまだ期限切れてないと思いますけど…部屋燃えちゃったんでしょうか」
「時間をかけて少しずつ燃えたらしいから、部屋の中はおそらく…」
唯一気に入っていたあの本棚。
バイト先の店長にもらった冷蔵庫、初ボーナスで購入した洗濯機…
思い入れがあるという訳でもないけど燃えてしまったと聞けばなんだかさみしいような。
「…行けるか?」
優也にそう優しく問われてうなずき、とりあえず管理人さんに向かうと連絡を入れてもらう。
ショックな状況の中、僕は無意識に祈っていた。
アノヒトの仕業でない事を。
いくら僕の事が嫌いで憎くても、知り合いでもない近所の人を巻き込む可能性のあるような
そんな汚い事はしないだろうと思いたくて。
腹違いとはいえ一応は兄弟なんだから。
_コレハバツナンダヨ_
言われ続けていた言葉。
思い出すと今でもゾクリと背中が冷える。
待ち伏せされた夜、アノヒトは言った。
逃げられるわけないだろう。と。
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