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顔を上げると、速見は人差し指を立てて提案するように言った。
「明日の弁当に唐揚げ入れてこい。それでチャラだ。今日の唐揚げがうまかったからまた食べたい」
「唐揚げって・・・」
そんなのどう考えても割に合わない。
再び目を伏せそうになると、速見がさらに言葉を続ける。
「本当は今日、弁当代払うつもりだったんだ。タダで昼飯食わせて貰うわけにはいかなかったからな。でも今日と明日の分はタダにしろ。それで許す」
「それでも、許されることじゃねーよ」
「いいんだよ」
伸びてきた速見の手が、俺の頭をぐしゃぐしゃに撫でる。
それに抵抗せずにされるがままに撫でられていると、クハっと、速見が吹き出すように笑った。
ーーードキッ、と
不意に心臓が跳ねる。
「犬みてーだな」
「なんだそれ」
速見の手が離れると、頭はすっかりぐしゃぐしゃになっていた。
別に見た目を気にする方じゃねーけど、情けないくらいボサボサになった髪はなかなか惨めに見える。
それをさらに笑われるが、不思議とあまり嫌な気分じゃない。
むしろ、あんな事をされた後に笑顔を見せてくれるのが安心できた。
「まあ、あれだ。・・・また、明日も弁当、よろしくな」
「おう。もちろんだ」
"これでチャラだ"という言葉に甘えて、俺も笑顔を見せると、速見はホッとしたように表情を緩めた。
強面な奴だと思っていたが、案外表情は豊かでとっつき安い男だ。
「んじゃあ、帰るか」
「あぁ、そうだな」
未だに申し訳なさを残しているが、速見に促されるまま、帰路へ着くことにした。
速見の家と俺の家は、学校からの方向こそ違っていたが、結構近くに住んでいることがわかって、これから時間があれば一緒に帰ろうなんて話をしながら並んで帰った。
久しぶりに趣味の合うやつと話せたことが、結構楽しかった。
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