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ー罪ー
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「ハァハァ・・・・・」
誰もいない河川敷に座り込み、そのまま倒れこんだ
荒い呼吸をしながら口から出る白い息を見つめていた
今は何も考えられない
頭の中が真っ白と言うのはこういう事なんだろう
しばらく寝転がりながら呼吸を整えた
広げた両手には真っ赤な血の痕がついていた
ポケットを探り、血だらけのナイフを取り出し、1時間前の事を思い出していた
「翔、最近帰りが遅いぞ」
「いろいろ付き合いもあるんだよ」
「何の付き合いだ!」
「いろいろだって言ってるだろ」
こいつは死んだ母親の内縁の夫ってやつ
血の繋がりは全く無い
俺はそいつを避けていたし、父親だと思ったことも無かった
でも、母親が急死して俺の生活が変わった
まさかこいつと暮らすなんて思ってもいなかった
だけど、こいつは高校生の俺を引き取った
仕事はリーマンだとか言ってたけど、それも信じられない
こいつは毎日、母親の残した保険金で飲んでいた
仕事にも行かずにね
その時点で仕事なんかしていないんだろう
そして今日も酔っ払いながら臭い息で近付いてきた
「何だよ」
「何でお前を引き取ったか知ってるか?」
「知るかよ」
「お前は母親に似てとても綺麗だからだよ」
「意味がわからない」
「だからこれからは、母親の代わりに俺に抱かれろ」
「は?」
最初は冗談だと思っていた
でも、冗談ではなかった
あいつは俺を押し倒し、服を引き裂いた
「やめろよ!」
「やはり綺麗な肌だ・・・母親よりも綺麗だしな」
「はなせ!」
「黙れ!」
思い切り腹を殴られて思わず呼吸困難になった
「ゲホッ・・・ゲホッゲホッ」
「そうやって大人しくしていればいいんだ、お前がいたからあんな女を抱いていたんだからな」
「ふざけるな!」
「そうだろ?俺はお前だけが欲しかったんだ」
そして俺は無理矢理、義理の父親に犯された
痛みしかない地獄
何度も何度も俺の中に吐き出す液体
もちろん口の中にも
悔しくて、悲しくて
でも、憎悪の方がはるかに上だった
満足したのかそいつは俺から離れ、また酒を飲みだした
許せないのはもう一つある
こいつは母親を裏切ったんだ
痛む体を起こし、テーブルの上のナイフを見つめた
ここにいればまた同じことをされるに違いない
だったらこいつを殺してしまえばいいんだ
気が動転していた俺には他の手段が思いつかなかった
どこかに相談するとか警察に行くとか、何も浮かばなかった
ゆっくり近付き、ナイフを手に取った
そして、背中を向けて酒を飲んでいるあいつにナイフを突き刺した
何度も何度も・・・動かなくなるまで突き刺した
しばらくして、あいつの死体を見て我に返った
後悔はしていない、でも体が震える
こいつの為に捕まるのは嫌だ
俺が被害者なのに・・・
でも、きっと警察は俺の証言なんが聞く耳持たないだろう
はたから見ればあいつは血の繋がりの無い俺を引き取ったいい父親なんだから
そのままナイフをポケットにしまい込み、顔に飛び散った血を洗い流し家を出た
怪しまれないように家の前では歩き、路地を曲がったところで思い切り走った
そして暗い河川敷までやって来た
だけど、これからどうしよう
きっといつかは死体が見つかって、消えた俺を警察は追うのだろう
でも、行くところも無い
このまま死んでしまおうか・・・・・
丁度目の前には川が流れているんだし、ここは深いと聞いていた
辺りを見渡し、誰もいないのを確認して立ち上がった
「どうしてこんな事に・・・・・あんな奴でも殺せば俺は殺人犯なんだ・・・どうしようもないんだ」
後悔しても今更遅い
どうせ生きてたって地獄に違いない
人目を気にして生きていくのは耐えられない
足を一歩前に出して、暗闇の中で流れる川を見つめた
苦しいかも知れないけど、残された道は一つしかないんだ
川に近付き、水の中に足を入れた
眩暈がするほど冷たい
足が痛くて仕方が無い
「クソッ!」
凍える足を前に出しながら、進んだ
腰まで水に浸かり、ガタガタ震えながら更に進んだ
「うわっ!」
一気に深くなり、流されながらもがいた
すごく苦しくて寒い
どれだけ我慢すれば死ねるんだろう
呼吸が出来ない
すごく怖い
意識が朦朧としてきた
俺・・・死ぬんだな
仕方ないよな
警察に行く勇気もない
弱くてズルイ人間なんだ
その時、誰かに腕を掴まれたような気がした
そのまま引っ張られるように川岸まで戻って来たのか?
でも、寒さと飲んだ水のせいで何も話せないし呼吸も出来ない
何だろう
温かいものが口に・・・
そして
「ゲホッ!ゲホッ・・ッ!」
俺は水を吐き出して呼吸が出来るようになった
でも、誰だろう
警察?
まさかね
もう何も考えられないや
すごく疲れた
このまま死んでしまえばいいのにな
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