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I didn't mean it…6
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スーツの男は俺と目が合うと、気まずそうに視線を外した。
いやいや、気まずいのはこっちなんですが……。
男はパーツの整った顔立ちで、身長も俺よりずっと高く、目測で言えば……うん。180cmは間違いない。
皺一つ無い仕立ての良さそうなスーツを着ているところをみても、良いところにお勤めってことはすぐに分かる。
モデル顔負けな足の長さには同じ男として嫉妬せざるを得ない。
「あの……この本がなにか?」
俺はこの場に流れる居心地の悪い空気をどうにかしたくて、恐る恐る尋ねることにした。
先ほど手にした皆月ユキの新刊を男に向けると、一瞬だけ視線が合う。
やばい。
何だろうこの感じ……。
最後まで残ってたパズルのピースがハマったみたいな。
理想の男ってほんとにいるんだって神様にハイタッチしたい気分だよ。
俺が恋愛感情抜きでセフレや夜の相手をどうやって決めるのかといえば、それはもう見た目。
第一印象しか判断材料がない。
『あ、こいつ上手そう』とか『良い体してそう』とか『取り敢えずエッチしてみたい』のどれかになる。
でもそこから先に、本当にセックスする時は似たような性癖を持ってるって分かってる時だけ。
俺はノーマルには絶対手を出さないって決めてる。
でもさ、この人のことそれ抜きにしてもすげーいいなって思っちゃったんだよね。
本能みたいなものなんだろうけど。
「……あの、えっと……好きなんです?皆月ユキ」
気付いたら身じろぎひとつしない男に話しかけていた。
しかもちょっと緊張してるのか声が震えてるなんてあり得ないし!
そして男は俺が話しかけたことに驚いたようで、また視線が合った。
少し色素が薄い黒目が凄く綺麗だなって思ったら、目をそらせなくなっちゃって、じっと見過ぎたせいかまたすぐ顔を背けられてしまったけども、相変わらず返事はない。
「……やっぱ今日、借りるのやめますね」
俺はわざとらしくそう言って、持っていた新刊を棚に戻し、その場から離れる。
別な本を探すふりをしてチラッと男の方を見ると、男は俺が戻した新刊を取り、数分悩んだ後、借りていった。
何だ、やっぱり好きなんじゃん。
結局新刊を手にできなかった俺は諦めて、少し遅めの昼食を取ることにした。
ほんとは新刊片手に、が理想だったんだけどしかたない。
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