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⑳
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トニ一・レオンに釘づけになってしまった。
互いに距離を縮めるトニ一・レオンとマギ一・チャン。上海の街角と活気の中でも二人の空気だけは別世界だった。トニ一・レオンは言葉にする以上に、相手への想いを語っていた。
熱い視線で、陰る頬で、饒舌な背中で・・・。
そんなトニ一・レオンの視線を許したのに、マギ一・チャンとの思いは交錯する。お互いに相手を欲しているのに、お互い手を伸ばせない。
苦しい。息がつまりそうだ。
二人の恋が実るようにと心の中で祈る。二人が抱き合ったら、僕は何か言えそうな気がしたから。
それなのに・・・
願いは聞き入れられず、成就しない恋の映画の幕が下りた・・・
そして僕は認めるしかなかった。
あんなふうに見つめられたら幸せだろう。僕はアキに見つめてほしいと思った。
アキの強い視線で射すくめられたいと心底思った。
・・・それは明らかだ。
僕はアキに恋をしている。アキは男で僕も男だ。でもどうしようもない。
だって僕はこんなにアキが好きだ。
認めてしまったら楽になった。アキは僕を好きになってくれるだろうか?
好きだといったら受け入れてくれるだろうか。
アキは熱にうかされたように細く目をあけて空を見つめていた。
視界の中に、同じ部屋にさえ僕が存在していないみたいに、アキは別のところにいた。
愕然とする。
アキが僕と時間を共有したくないといったら?
友達の僕はいいけど、それ以上の和泉はいらないって言われたら?
僕は耐えられない。友達のままでいるのも、いらないと言われることも。
アキはなかなか映画の世界から戻ってこなかったら、僕は隣の部屋のベットに勝手にもぐりこんだ。
アキの匂いのする布団にくるまりながら、僕はメソメソと泣いた。
色々なことが無理だった。今まで生きてきて誰かを好きになることがどういうことなのか初めてわかった。
とても苦しかったから逃げ出したくなった。
そうだ・・・いなくなればいい
アキのいないところにいけば、きっと僕は元に戻れる
アキの知っている和泉に戻れる。
3年会わなければ、僕だって以前の僕に戻れる
東京にいく・・・。
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