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㉑
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僕は月曜日、課長に東京に行くことを伝えた。それからは慌しく、仕事の引継ぎはもちろん、PCのファイルや机、資料の整理に追われた。
そんなに荷物はないとはいえ、住む場所を引き払うのは予想以上に大変だった。
昼間は目いっぱい会社で動き、帰ってからは荷物をまとめる毎日。
綾と会って別れようと話した。さんざんほっておいたし、僕の様子がおかしいのはわかっていたのだろう。
東京に行く、たぶん遠距離恋愛は僕達には無理だという僕の話を聞いて、綾は何もいわなかった。
悲しい顔もしていなかった、そこにあったのは諦めだった。
そしてアキに何もいわず僕は東京に行った。
さすがに新しいことをはじめるわけだから仕事は多忙を極めた。
まったく新しい環境で仕事に打ち込むことで、僕は自分を取り戻そうと必死だった。
札幌のことは極力考えないことにした。
アキからのメ一ルにも電話にも返事をしなかった
そのうちそれもこなくなった。
最初の一年はなかったことにしようと必死だった。
次の一年はなかったことにできないと気がつきはじめた
3年目はこのままでは無かったことにすることも、もとに戻ることもできない。
はっきりさせないとどこにも行けないことに気がついた。
同僚に「和泉」と呼ばれるたびに、僕を呼ぶ優しい声を思い出す。
暇つぶしにレンタルにいっても、沢山並ぶ棚の中で目に付くのは、一緒にみた映画ばかりだった。
作ってもらった料理と同じものを食べるたびに、おいしかったことを思い出す
女の子を抱いても、薄い唇と長い指に取り付かれている自分に気がつくだけだった
僕はどんなに距離をおいても、どんなに時間をおいても、この思いが消えないことを実感した。
3年かけて・・・。わかったのはそんな単純なことだ
逃げ出したはずなのに、僕はがんじがらめになっていた。
どんなに離れていても、逃げられない。
どこに行こうと、この「想い」は僕の中にあるのだから、逃げ出すことなんて不可能だったのだ・・・。
トニ一・レオンの新作が公開された。キムタクが出演しているから、彼を中心にメディアが取り上げている。
僕はキムタクがどういう役割だろうと関係なかった。
あの熱い視線のトニ一・レオンに会いたかった。見ても苦しくなるだけだと解っていても、やっぱり見たかった。やめようと思ったのに僕は映画館にいった
そこにいたチャウは誰のことも見ていない虚ろな男になっていた。
その意味は明らかで、前作で無くした恋が大きすぎたからだ。後悔という楔がチャウを蝕んでいた。
手のひらから零れたものは二度ともう戻らない・・・。
本当にそうだろうか?チャウ、君は本当に掴もうとしたか?成就しなかった恋に思いを馳せているだけではなく、過去の自分に後悔しているんだろう。
そして後悔したところで、もうどうしようもないんだと気がつくまでのスト一リ一。
チャウにこの続編は必要だったんだろうか?
前作を見ていなかった人はこの映画を見てどう思うのだろう
遠くまで逃げてきたけれど、僕はこのまま逃げ続けて後悔する気はなかった
「もしかしたら、あの時もしかしたら・・・」と思い続けて生きていくのは嫌だし無理だ
僕は決めた。自分の心の有様をぶつけよう
後悔とともに生きるくらいなら、手に入らないと思い知らされるほうがずっといい
そして期限がきれて、僕はまた戻ってきた。・・・・アキのいる場所に。
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